むら

象は静かに座っているのむらのネタバレレビュー・内容・結末

象は静かに座っている(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

実際の時間と同じようなリズムで時間が流れていくのは冗長で退屈だけどそれが最高に心地がいい。
しかし映画の視界は実際の視界よりとてもとても狭く、それは登場人物の視界なのかしら(彼らの生きる世界はとてつもなく狭い)。だから視覚の情報が少なくて、一瞬理解できないのだけど、想像力というのはとても豊かで、自然と勝手に補ってそれは大幅に外れることは多分なかった。
それらが合わさって、とてつもなく辛い時間を共に過ごした感覚。
そこには夢も希望もなくて、ただただ絶望が果てしなく広がっている。
唯一の希望と思われる「座っている象」も途中おっさんが言った通り、実際見に行ったところでそこで世界が変わるわけではない。それは私も彼らも奥底では気付いているけれど、願わずにはいられない。
かといって、映画が終わっても鬱々とした気分が続くかと言えばそうではない。それは多分ラストシーンが唯一俯瞰した画になっていて、それが比較的長い時間そのカットを入れてくれたことで、そして玉蹴りが全然うまくいかないことで、「ああこれはフィクションなんだな」とじんわり現実に戻してくれたお陰だと思う。
絶望しかない作品だけど、とても優しかった。優しいが故に悲しかった。いっそみんなバッドで殴ってしまえばいいのに。
むら

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