サンヨンイチ

ジュラシック・ワールド/新たなる支配者のサンヨンイチのレビュー・感想・評価

3.4
29年、シリーズ集大成。
前作で世に放たれた恐竜たち。
人間の失敗で脱走した訳ではなく
1人の少女によって意図的に、自由を与えられた。
シリーズの根底を覆す行動に対するアンサーが
本作では期待されつつ、
広げすぎた風呂敷の畳み方にも注目が集まった。

結果、
前作で盛大に投げられた問題を脇に放置し、
わざわざ立ち上げられた別の問題の解決にすり替えられた。
あまつさえ、その主題の千両役者は
シリーズ名物のT-レックスでもなく
恐竜唯一の固有キャラであるヴェロキラプトルでもなく、
新登場した地上最強の肉食恐竜(×3)でもなく、
イナゴだったというオチである。
そしてイナゴは駆除して解決、と。
人間のエゴによって産み出された恐竜とイナゴ。
前者は共生の道を辿り、後者は害虫とみなす。
一体何が違うというのか。

ラストに動物と恐竜の共生する姿を映し出し
それっぽいセリフをボイスオーバーで。
美しさでごまかそうとしているが
そんなセロハンテープみたいな緩い接着では
この風呂敷は閉じられない。
そもそもラストのいくつかのシーンは
本作のエピソードとは関係がない。

マルタ島だったり、
なんとなくワイルドスピードを彷彿とさせる
移動距離とそれに見合わない時間経過が
感覚を狂わせ、ストーリーの内容が頭に入ってこない。
それならばと、自然と恐竜の造形に
映像的カタルシスを求めたくもなるが
VFXの非現実っぽさは
近年感じたことの無いほど強烈だった。
硬い皮膚の質感は
やはり実物のアニマトロニクスには及ばないことを
強く実感する。


ただ、ホラーとしての面白さは
要所要所で確実に存在し、
たっぷりと魅せる垂涎な演出に一定の満足感があった。
(イナゴへのツッコミとは矛盾するが、イナゴが最初に飛び出してきたときの異様さには身震いしてしまった)

やっぱり続編の閉じ方は難しいんだなあとつくづく思う。