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バード・ボックスのtsuraのレビュー・感想・評価

バード・ボックス(2018年製作の映画)
3.9
意外と厳しいレビューが目立っていてびっくり。


S・キング「ミスト」やマックス・ブルックス「ワールド・ウォー・Z」を足して二で割った様な映画かなと思って見てたらいやいや、エンターテイメントとしても高いレベルにあったと私は思ったのだが。

もちろんやや強引な設定や展開、主役たちの運の良さなどツッコミ入れたくなるところもあるにはある。

しかし男女の違いが上手く描かれたトムとマロリーの喧嘩然り、家に逃げ込んでからの様々な人との対峙など作品自体が人間の根幹を試される設定ゆえにそう言った機微の描きこみも意外とちゃんとしてたし、それらがこの作品の下地を形成していたのは言うまでもない。

それらは特に後半の急流下り以降のスリリングな展開で息つく間もないからついつい、おざなりになりがちだけど…前半部のドラマあっての後半だと思う。

でもまぁもっともなところ、この作品に触れ感じたのはマイノリティーや差別に対するアンチテーゼを上手く利用した内容だったなと。

あまり触れ過ぎるとオチに触れてしまい兼ねないのでストーリーに合わせた言及はしないが、世の中に対する偏見や怒り、差別はそれらを受けている人にとってはこの作品の様な"見たくもない恐怖"に駆られているのだろう。

映画はSFスリラーの様なホラーの様な装いだが、これは歴然とした"マイノリティー"の映画であり、家族の愛を描いた映画でありながらそれを上手にシチュエーションホラーに仕立てたわけなのだ。

という事でサンドラブロックもまた良い仕事したし(彼女の様なアンバランスな立ち位置から強い女性へと変化していく役をさせるならピカイチだなと改めて感心)、「メッセージ」に続く話題作・代表作を世に送り出す事が出来たエリックハイセラーや矢張り上手いなと唸ってしまったがそんなスザンネビア監督にはこれからも要注目ですね。


鳥さんの鳴き声はちゃんと耳を澄まして聞かないとねいけませんね。

それにしてもあんな恐怖に駆られたら、人類は生きていけるのだろうか。
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