無彩

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの無彩のネタバレレビュー・内容・結末

3.0

このレビューはネタバレを含みます

およそ3時間半の映画だけど、セットも豪華で、十分観れる映画になってるし、退屈もしなかった。大作と言えるかもしれない。

ただ、この映画が忘れ去られたアメリカの暗部を暴き出そうとするならこの内容では不十分ではないだろうか。まず、どうして主人公が白人なのだろうか。スコセッシ監督は、自らの出自としてイタリア系白人を使っているが、この映画の内容ではイタリア系アメリカ人が自分たちの家族の利益のために犯罪を行なったという話(原作ではどうなっているのか?)に終着してしまう。結局、ネイティブ・アメリカンたちが殺されたのはオイルマネーを持っているからであり、ネイティブ・アメリカンでなくても成立する映画になってしまう。しかも、ネイティブ・アメリカン側の心理もあまり描かれないので、彼らの苦しみや怒りに対しても十分感情移入できない。(そもそもなぜネイティブ・アメリカン側も白人達と簡単に結婚するのか?)その上初期段階ではもっと白人中心の話で、FBI側にもフォーカスを当てたものだったと言うから驚きである。

差別的な映画ではないし、製作陣にも差別意識があったとは思わないが、やはり結局エンタメものに過ぎず、「アメリカでは過去にこんなことがありましたよ。」程度にしか感じられない。安易に人種問題を取り上げた中途半端な作品になってしまった。

この作品が映画祭で受賞されたり、オスカーを獲ったりすれば、やはりそんなものは権威主義的で無意味なものなのかもしれない。
無彩

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