君たちはもう生きるな

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンの君たちはもう生きるなのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

『インディアンの命は、犬より軽い』

劇中にあった言葉だ。
これが、この映画における事件の異常性そのものではないだろうか?

わかりやすい悪として描かれていたキングだが、1920年代のアメリカにおいて、彼のような思想を持つものは、決して少なくなかったはずだ。

はたして、キングをただの悪者として解釈していいのだろうか?
その時代に、その立場に、もし自分が立ったとして、自分は決してキングのような考えに至らなかったか?

キングは現代社会、言い換えるならば資本主義社会の権化なのだ。
そして我々はその社会の中で、その異常性の中で育まれた環境の中で生きる"キング"にすぎない。

弱者をつくり、蔑み、搾取する
これは、アメリカ開拓時代から現代にかけて、変わることなく繰り返し続けられる人間の性である。

これは、ただの事件ではない。
これは、キングが悪者で済む話ではない。
これは、差別を批判する映画ではない。

これは、我々もキングであり、そしてインディアンでもあるという、人間という生物の真実を気付かせてくれる、そんな作品だった。


余談にはなるが、私の知り合いに、としきんぐというキングがいる。

私は、彼にこの映画を勧めることはしないだろう。なぜなら登場人物が多すぎて、きっと彼は理解できないだろうから。

これだけは言っておく。
としきんぐ、主人公は長男だぞ。