Iwa

キラーズ・オブ・ザ・フラワームーンのIwaのネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

最近映画館で寝る率が高かったから、3時間越えで爆発もカーチェイスもないこの映画は不安だったけど、全然大丈夫だった。

レオ様、「キングから言われたことは絶対!!」ってところで思考が停止してる(言われた事を実行した結果のことは考えない)んだけど、それは「疑うことがすでに裏切り」くらいの強い洗脳があったからなのよね。

俺はバカじゃない!ってセリフがあるけど、もう疑う余地のないアホだし、おそらく弟からもずっと見下されてたんじゃないか。だからこそのプライドの高さって感じはする。
もう本当にクズだし中身もないペラッペラだし軽蔑の念しかないけど、でもギリギリ嫌いにはならない、ギリッギリ憎めない、その絶妙なラインを攻めることができるレオ様はさすが。

奥さんに投与する薬、勿論どういうことになるかは感じてはいただろうけど、深く考えず、キングの言った通り「静かにさせるだけのこと」って思おうとしてる
キングを裏切ることなんて考えられない、レオ様自身には何にもなくて(地位や名誉などの外部要素も、知性や思考力という内部要素も)、ただキングの甥って土台しかないんだし。
(半分薬を飲むシーンあったけど、全部飲めよ笑…まあそれはキングへの裏切りになるからできないんだけどね)

観客はキングと過ごしてまだ2時間半くらい?3時間?だけど、レオ様は5年?くらいあそこで暮らしながら人殺しに加担してるんだものね…

ただ家族が大事、というのは本当なんだけどねー…、奥さんに毒を打ってたって認めたら何か変わったのかしら。
レオ様はずっと、家族大事なオレとキングの命令絶対の殺し屋のオレを、ダブスタというか二重人格に近い感じで生きてきた…(後者が前者に与える影響を無視してたって方が近い)から、毒を盛ってたってことをあそこで認めない限り、このダブスタ状態から脱却できないんだけど、無理だったね

悪の凡庸という言葉があるけど、近いものを感じる。まあ、命令されただけっていう官僚タイプじゃなくて、敬愛するキングが言うから!っていう忠犬・ホモソーシャルタイプだけど。

キング見てると、人を動かすというか、洗脳ってこうやるんだあ…ってのが分かるね
誰にでもfriendって呼びかけて、好好爺の顔をしてね。

あと正義がなされた!って最後の劇場みたいなとこで言ってたね。
でも普通に幸せに余生過ごしてるじゃねえかキング。医者は逮捕されてないし。
結局茶番なんだよ、あの劇場の舞台の上もほぼ白人だったし、結局インディアンの血なんて軽いんだよ(洗脳力を発揮したんだろうけど、それでも白人が被害者だったらありえない)。
兄弟がトレーラーハウス暮らしなのは笑った。仲良くなかったのに…

あの時代なんて、「白人がインディアンに仕えてるなんて!!?」「あの子は混じり気がないみたい」みたいなそういう価値観の方が普通だもんな
レオ様も言葉の端々に奥さんへの「どうせ分からない」みたいなこと言うもんね、お前には言われたくねえよ

本当にインディアンと白人の関係は歪だったな
ああいう「上位グループ」が「下位グループ」の生活圏に入り、彼らの生活を壊し、自分の生活を押し付けていく社会にありがち。
女達は「上位」の白人と結婚するけど、あれもまあなんだか(本人たちが望んでても)。
彼らの価値観を上位のものとして受け入れようとした結果、アルコール依存症や糖尿病、うつ病が蔓延しちゃうしね。
先の「インディアンには分からない」のところ、あえて挙げるなら、レオ様に関して「あの人はお金目的じゃない、叔父さんがお金持ちだもの」ってセリフかな。
あいつらにとっちゃ、金はあればあるほどいいんだよ、多すぎると言うことはない。

…それにしても奥さん役の人綺麗だった、衣装も素敵だった。やつれちゃったの辛かったから、回復してよかったよ…;;
Iwa

Iwa