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川沿いのホテルのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

川沿いのホテル(2018年製作の映画)
4.5
【睡魔の長いトンネルを抜けると美女であった】
開催危ぶまれた東京フィルメックスが奇跡の復活!しかも、最強の作品しか提げずやってきた!そんなフィルメックス1本目は、まさしく映画祭に相応しい作品でした。

川辺のホテル。詩人の男は、息子との再会を待っているが待てども待てどもやって来ない。退屈過ぎて、詩人は寝てしまう。そして、起きると目の前に美女二人白銀の空間にぽつんと立っていた。一発で惚れ込んだ詩人の、美女を追い回す旅が始まる、、、というホン・サンスにしては珍しくドラマチックな作品だ。

本作は、空間の妙が素晴らしい作品だ。父と息子たちは、ホテルのカフェの壁越しに座っていて、互いに気づかない。そして、父が庭で美女をナンパしている時、初めて息子たちの視界に入るのだが、息子たちは会話に夢中で気づかない。そして、美女に会いたいモード全開な父は、息子たちに悟られないように、「アッチでコーヒー呑もう」と美女が向かった先に誘導しようとしたり、美女にあげられなかったヌイグルミを息子に仕方なしにあげたりする。

映画祭という、普段映画館で遭遇しないようなTwitterやFilmarksの住人が一堂に会し、「あの人はひょっとして××さんかもしれない」という知りたいようで知りたくないワクワク感が包む空間で、この同じ場にいながら何も知らない人たちのなんとなく噛み合う会話の妙を堪能できるほど至高なものはありません。

全く説明描写もなければ、男と女がただただ駄話をし、駄話から漏れるホン・サンスの独り相撲を見届ける映画。つまりはホン・サンス ファンムービーなので、あまり人にオススメできませんが、ホームランな大傑作でした。
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