ちゃくろねこ

幸せへのまわり道のちゃくろねこのレビュー・感想・評価

幸せへのまわり道(2019年製作の映画)
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トム・ハンクス演ずるMr.ロジャースが、とても優しく穏やかで他者への思いやりに溢れた人物なのですが、その優しさとは日々意識して自制し努力した結果身につけたもの、という描かれ方が新鮮でした。生まれながらの性質とか簡単にできることではなく。人は身勝手に他人に優しさを求めるけど、その優しさというのは厳しい鍛錬ともいえる努力の賜物なんだよ、と。

その一方で、親による虐待被害のPTSDに苦しむ人たちにとっては、とんでもねぇ呪い映画になるのではなかろうか、とも思いました。
主人公が抱える、「親から虐待を受けた子どもが大人になってから、その親とどう向き合うのか」という、なかなかにセンシティブな問題を、Mr.ロジャース的いい人文法で解決しようとすると、(被害者に向かって)「許しなさい…怒りを抑えなさい…親を本当は愛していると認めなさい…それによってあなた自身も救われ、他の家族も大切にできるのです…親子家族は仲良しが一番です…」っていう、被害者側に内省や成長を促し、気の持ちようですよと言わんばかりのお話になってしまうんですよねー。しんどい…
まあこの主人公も、本音では父親と和解したい(解放されたい)と思っていたのを、Mr.ロジャースが察して背中を押してくれたのだ、と読めなくはないのですが。
ただいずれにせよ、この映画の製作側が、虐待被害のPTSDという問題を、突き詰めて考えているようには見えなかったんですよね。いい人エピソードのネタ扱いというか。あの母親が出てきたシーンとか特にモヤモヤしました。
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