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惡の華の83GOGOのレビュー・感想・評価

惡の華(2019年製作の映画)
4.8
「超変態狂騒劇」
一般男子が一度は夢みる?好きな女の子のニオイを嗅ぐ行為は まだライトな方と思うが、体操服を持ち帰ってしまったが為に…

この少年春日を演じているのが伊藤健太郎だ。可愛らしい顔をした彼が いくらブルマを嗅ごうが、履こうが、被ろうが爽やかさしかないと思っていた。また彼を虐げ罵倒する仲村を演じているのがとてつもない美貌を持つ玉城ティナ。美しすぎる2人に変態役などできるのであろうかと疑いながら見始めた。

結論から言うと この映画は「変態」を突き抜けて「純粋」な青春映画であった。「青春」の残酷さ、生きづらさ、危うさ、絶望感、行き場のない孤独感を ありえない角度から見事に描かれたれっきとした青春映画であった。少女漫画によくあるキラキラとは正反対のドロドロぐちょぐちょな青春地獄映画であった。

もしこの美しい2人でなく、冴えない顔をした人物がこの役を演じたとしたら 観客は地獄に落とされたままトラウマを持ち 決して元の位置まで這い上がることはできないであろう。

仲村の無茶苦茶な要求にイヤイヤ応える春日だが、だんだんとM性に目覚め、最終的には仲村の喜ぶ顔が見たいという春日の表情が素晴らしい。役者伊藤健太郎の実力を改めて感じることができた。中学生と高校生とで全く違うタイプの陰キャの演じ分けも見事。

またその春日を虐げる仲村役の玉城ティナ。今まで見たこともない演技で度肝を抜かれた。春日を罵倒し翻弄させる仲村と 春日と心が通じ合ってからふと見せるピュアな仲村。これは春日も彼女に落ちてしまう。そして あの目。本当に素晴らしかった。

あと絶対忘れることができない佐伯さん。3人の中で彼女が一番まともだと思っていたが、これまた仲村によって彼女の中のドス黒い部分がさらけ出されていく。これを演じたのが 当時15歳の秋田汐梨。末恐ろしい。この子は凄い。「がっかりした」の一言でここまでゾクゾクさせるとは。

最後に常盤さんを演じる飯豊まりえ。経験済み感満載の陽キャに見えるが、その中に潜む陰キャ感がたまらない。

井口監督の丁寧な映画づくりには脱帽する。リーガルリリーの音楽、照明、撮影、この映画に関わった方々の原作愛溢れる想いがひしひしと伝わった。

原作者の押見修造先生。このような素晴らしい作品をこの世に生み出してくださり 本当にありがとうございました。

この青春地獄映画は中毒になりそう。公開したら また観に行く。春日、仲村にまた会いに行きたい。
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