じゅんふう

惡の華のじゅんふうのネタバレレビュー・内容・結末

惡の華(2019年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

原作が好きで、特に高校生編が好きなので、まずそれを満点に近い形で映像化してくれたことに感謝の意を表したいです。特に最後の、浜辺で転ばしあう3人の美しさに感無量になってしまった。
「2度と来んなよ、ふつうにんげん」のセリフに涙が止まらなくて原作を読んでいた当時のいろんなことを思い出して放心してしまった。

中学生編の、教室中に墨汁ぶちまけて暴れまわったり、パンツ盗んだり、夏祭りをめちゃくちゃにしたところとか、センセーショナルである種俗悪な箇所はケレン味あって注目されやすい。だけど、拙くて幼い振り返れば恥ずかしいばかりの肥大した自意識と、田舎の閉塞感からくる自我の暴走、痛々しい程の剥き出しの思春期、他人とは違うと思いながら傷つけたり傷つけられたりした人達と、無知で無垢な自分に対しての償い、精算、乗り越えてからの自己の肯定などがあってこそ惡の華であり、高校生編があるからこそあの前半の奇を衒ったインモラルな言動が意味を持ってくるので、前例(アニメ)みたいに中途半端な終わり方をして変な気分のまま帰らされるんじゃないかと緊張していた。懸念に終わってよかった。
望むなら、高校生編の彼氏のくだりや、大学生編で惡の華を講義で取り扱ったり普通の人間で年老いていく様を数分でいいから入れてほしかった気もするけれど。個人的にもうあと20分ぐらい足しても良かったと思ってしまうほど。常磐さんが少し浮いてしまったような気もしたし、やっぱり2時間数分じゃ短いな、と感じました。

ただ、中学生編と高校生編を綯い交ぜにして進めることで絵面が地味になる高校生編の熱を持たせたまま進ませる演出は脱帽するぐらい良い演出だった。映画として集約して出すために練られたすごく効果的な演出。

なんといっても玉城ティナちゃんの憑依されたかのような演技が素晴らしい。怪演とはこのことで、どこを切り取っても絵になるという綺麗さ、危なさに理想を超えた仲村さんがそこにいた。
歩き方や表情の作り方まで“抱えた者”特有の動きで、なにか乗り移ってんのか?ってぐらいそのものだった。
何よりも美しいけど闇が深い、それを体現できている凄さ。
佐伯さんとのデートのときのササササッって動きがそのままで笑う。

最終巻で黒目を上げた顔がドアップになるシーンの意図が未だにつかめずにいたけれど、空を見上げてると初めて理解できた。漫画表現を超えた再現をしつつ、ちゃんと目とまつげが惡の華になっているという最高の撮り方。美しい人の撮り方。
佐伯さん役の子もよかったけど、ひとつひとつ言及していったら行数半端なくなってしまう。良い実写化だった。キャスティングで不安だったけど、玉城ティナちゃんの美しさと、仲村さんの陰がこんなにも合うとは思わなかった。
原作を一番正解に近い形で実写化してくれてありがとう。
リーガルリリーの主題歌劇中歌も100点で本当に良かったです。

玉城ティナちゃんじゃイモくささがまったくない、ただ近寄りがたいことだけ、春日役が身長でかすぎる、顔が整いすぎている、これで中学生は無理がある、などの意見は観た当初は思ったりもしましたが、映画「悪人」評で宇多丸さんが言っていた「周りからみたら地味な二人だけど、本人たちには互いにこうまぶしく見えてる」論を勝手に付け足して補完します。「高校生の時に回想したから一人だけ身長がおかしいし、仲村さんが超絶美少女なのは春日の脳内補完によるもの」という都合のいい解釈を…

いろんなことを思い出した。
学生時代の生きづらさ、窮屈さ、救えなかった事、忘れていた感情すべてが蘇って大変な気持ちになってしまった。
じゅんふう

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