今年の5月、カナダの寄宿学校跡地から215人の子供の遺骨が発見されたニュースはご存知の方も多いと思いますが、
カナダでは19世紀から1990年代まで"先住民同化政策"という名目で政府やカトリック教会が運営した多くの寄宿学校がありました。
今作は、1950年代に6歳の少年ソールが家族と引き離され、インディアン寄宿学校に強制収容され、施設内での暴力、性的虐待、理不尽な社会や人種差別を経て青年になるまでの半生を描いています。
苦しい日々の中でひとつだけソールにとっての光明があった。
それはスポーツです。
早朝からアイスホッケーのリンクを清掃し、密かに練習を繰り返す。
そして村のホッケーチームの監督から声がかかり寄宿舎を出る事となる。
その監督が親代わりなり新しい家族となりしばし幸せな時間を過ごすことになる。
しかし17歳になったソールは見る見る頭角を現し北米のNHLにスカウトされ、唯一のインディアン選手となるのですが、
唯一の安らぎであったスポーツでさえもソールを悲しみのドン底に、
白人だけのチームにソールだけ人種が違う、審判もその他の選手からも差別や暴力を受け乱闘騒ぎを起こしてしまう。
先々で人種差別や、理不尽な社会に直面し、その後スポーツからも離れる。
酒に溺れ、身体を壊しカナダ中を放浪する頃、彼は30歳になっていた。
心身共にぼろぼろになったソールは美しいカナダの自然の中で、
かつて家族と暮らした森に向かうのです。
6歳でママとパパと祖母と離れた日々を湖の前で思い出すソール、
彼は初めて水面に膝をつき泣き崩れます。
幼い頃、寄宿舎にいた時も気丈だった彼は泣くことがなかった。いや、泣く場所すらなかった。
そして当時、何が彼に行われていたのか、自分の中で無かったことにしていた神父からの性的虐待を思い出す。
カトリック教会内での少年への性的虐待はここでも行われていた。
ファーストネイション、ネイティブ・アメリカン、彼等に何か罪でもあるのでしょうか?
先住民族を追いやった入植者に罪があるのでは無いのか?と、私は思ってしまう。
戦争中は我が日本も同じく、台湾、インドネシアなどの民族に同じ行いをしていた。
こういった作品は日本でも製作するべきで、今作も日本で上映しなければいけないと思う。
作品全体の構成も題材もとても素晴らしく、多くの人に鑑賞してもらいたい。
先住民族を描いた数少ない作品です。
私がレビューしたところで素晴らしさや良さを伝えることはできませんが、この原作を映像化し世に送り出した監督やスタッフに感謝したいと思います。