まぬままおま

インソムニアのまぬままおまのレビュー・感想・評価

インソムニア(2002年製作の映画)
4.0
脚本はヒラリー・サイツだが、ノーラン作品に通底する要素はある。

それこそ「人間不信」と事件の物語化だ。

以下、ネタバレ含みます。

アラスカで発生した女子高校生殺人事件。その事件を追う不眠症の刑事・ドーマーと殺人犯・ウォルターが奇妙な共犯関係になるのは、共に証拠や証言を捏造し、事件に別の語りをもたらし、罪を逃れようとするからだ。

ドーマーの罪とは犯人を追跡中に誤って同僚のハップを撃ち殺してしまうことだ。ハップは、内務監察部がドーマーの過去の捜査に対する調査をしている中で、彼を裏切り証言をしようとしていたから、それがハプニングとは言えども死んだのは好都合だった。

しかしこのことをウォルターに目撃されてしまう。そのため、上述のような共犯関係が成立するのだが、このような事件の物語化は『フォロウィング』や『メメント』、『プレステージ』にも共通しているし、『オッペンハイマー』でのオッペンハイマーが「裁判」によって罪化していることにも通じる。

人間は自身に都合のいいようにしか事件を語らないから信じられないし、一貫した物語を語ろう/騙ろうとすればするほど、ドーマーが避けようとしていたように不正に向かってしまうのだから悲劇だ。

本作もラストが共倒れであることが何とも後味が悪いが、真実を明るみに曝すエリー・バーの正義感を信じることにしよう。でもそれはかつてのドーマーのような気もするが。

追記
本作は白夜のアラスカが舞台であり、トランプのジョーカーも登場している。後に『ダークナイト』でジョーカーが登場することを思うと、何とも興味深いディティールだ。
後は流木での逃走劇のアクションをみたことなかった!面白すぎでしょ。絶対水中の溺れる描写を撮りたかったんだろうな。撮影大変だったろうけど…