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ザ・ライダーのnaoのレビュー・感想・評価

ザ・ライダー(2017年製作の映画)
4.1

何もできないと感じながらも自分の存在意義を探し続ける

あの一瞬の感覚、それだけのために

自分の一部である自然と馬との暮らしが、ある日突然無くなってしまった主人公
自分の生き甲斐、これからの人生、何を見て生きればいいのか見失ってしまう

この主人公の様に誰であっても、出口の見つからない葛藤を繰り返すことは少なからず経験する
夢に生きるか、現実を生きるかなど簡単には選択できない。だけど、その中の過程で自分の生きる目的が何なのかを人間は探し、考え続けていく
そして、その考える事こそに意味があり美しいのだとこの作品は訴えかけてくる

このメッセージを感じた時、現代に生きる自分自身を顧みずにはいられなくなると共に、人生の陰の部分である残酷さや儚さを改めて感じさせられました


静かにゆっくりと1人のカウボーイの青年を淡々と描写しているだけなのに、この青年の生活から様々なものを感じさせてくれる。ジャオ監督の凄みはこういった、1人の青年を淡々と描写するだけにも関わらず、普遍的でエモーショナルな物語に成立させていること
冷たい視線や優しい甘えのような演出を物語に加える事はなく、夢を諦めるしか無い青年を主軸にカウボーイの日常を巧く捉え、演技と素の境界を全く感じさない

100年前から変わらないようなタイムレスな景色と価値観が映し鏡となって、閉塞感が漂う今という時代にかすかな希望を感じさせ、感動がゆっくりと体を包む一度限りの魔法のような作品です
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