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aftersun/アフターサンのnaoのレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
4.4

ある時は喜びをわかちあうが、離れているときにはそれぞれが複雑な事情を抱えている。そんなふたりの人間の物語

父と娘、どんなに悲しい別れ方をしても、2人の間にあった愛は永遠だった
今は会えないかもしれない、しかしビデオテープを通してなら父と同じ景色を見ることで、再び繋がることができる
そして、何より私の心のカメラに残っているから、、


誰しもが親であり、子である
この作品には、多くの人が持つ経験や記憶が自己を通して反映される

説明は皆無、セリフは少なく、曖昧表現や比喩が多々あるのでストーリーは若干読み取るのが難しい。娯楽性にも欠けるのでこれを退屈だと感じるのは無理はないのかもしれない。
ただ、説明不足の余白の中に投影されるのが、鑑賞してる自分自身の体験や記憶である。

ソフィの感情と共に、自分の持つ過去の記憶と思い出が蘇り、作品とのつながりがより深まっていく。そして、映画の終わりに、ソフィが劇中彼女の人生を辿ってきたのと同じように、この映画のなかで目にしたものを無意識のうちに振り返り、見つめ直してしまう。

記憶は非常に曖昧で、感情や感覚を完璧に思い起こす事は難しいかもしれない。
しかし、多くの時間が経った今、振り返り、見つめ直すからこそ気づけるものが、その曖昧さという余白の中にあったりする。

自分自身の記憶を遡るかのような浮遊感の中で、過去の記憶とこれから歩む未来について考えさせられる素晴らしい作品
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