あつお

エンツォ レーサーになりたかった犬とある家族の物語のあつおのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

とある従順な愛犬のお話。
本作品は夏目漱石の「吾輩は猫である」の視点で描かれる。人間と同じように言葉を操りながらも、話すことはできない。そんな不思議な存在だ。当然人間からは見た目でしか判断されないため、犬として人間では聞けない情報も与えられる。面白くも心温まる作品だ。
物語の舞台は、F1レーサーを夢見る青年、デニーと共になる瞬間から。その時から、エンツォはデニーのレーサーになる夢を応援しながら、人生を共にすることに。初めはデニーの全ての時間を独占していたエンツォであったが、デニーに恋人ができて一変。ゾーイにデニーとの時間、デニー自身を取られてしまったかのように感じる。ゾーイに嫉妬しながらも、デニーの夢を応援する彼女にやがて共感するようになる。
しかし、人生は全て順風満帆とはいかないもの。ゾーイは次第に弱り、親族との関係もギクシャクし始める。レーサーになる夢を諦めなければならないのか…そう思うも、デニーはゾーイのために自分の信念を、価値感を貫く決心をする。
物語の後半、エンツォは「犬は生まれ変わったら人間になる」とも語っている。愛犬との思い出は大切なもの。誰かとの別れがあったとしても、この世のどこに存在し自分たちを見守ってくれたら嬉しいですよね。
人生の信念を貫く大切さ、支えてくれる人がいる大切さを感じる作品でした。
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