MasaichiYaguchi

ゴーストマスターのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ゴーストマスター(2018年製作の映画)
3.6
「あれっ、観る作品間違えたかな?」と思わせるようなオープニングから随所にブラックジョークというか“毒”をぶっこむ本作は、単に毒舌ばかりだけではなく、そこにはB級ホラー映画に対する愛が溢れている。
本作では、廃校を借りて青春映画を撮影しているスタッフやキャストによるホラーコメディが繰り広げられるのだが、題材といい、世界観といい、昨年公開されて社会現象化した「カメラを止めるな!」を彷彿させるものがある。
ただ2作品で大きく違うのは、撮影現場をプラス思考で捉えるかマイナス思考で捉えるかにある。
「カメ止め」では撮影時の思わぬアクシデントに立ち向かうスタッフ達の奮闘が笑いと共に描かれていたが、この作品ではスタッフ、特に損な役回りの助監督に皺寄せが集中し、その上バワハラ、超過労働が追い打ちをかける。
三浦貴大さん演じる助監督の黒沢明は、名前は「巨匠」と同じだが、気が弱く要領も悪くて完全に名前負けしている。
スムーズに進まない撮影の最中、更に黒沢の心を折るようなことがあり、彼の黒い感情が空前絶後の事態を引き起こしていく。
タイトルは、トビー・フーパーに憧れる黒沢がいつの日か監督になった時に撮ろうと思っているホラー映画の題名及び脚本を意味する。
本作は、この脚本に黒沢をはじめとした撮影現場の溜まりに溜まった負の感情が宿って悪霊化し、それが引き起こす惨劇を描いていく。
この惨劇や、それを引き起こすものの描写が、ハリウッド映画のようなハイテクVFX ではなく、日本映画が得意とする手作り感のある特撮技術によるものであり、そのアナログチックさが何とも懐かしくて嬉しい。
ラストシーンに至るまでの展開も、この映画が長編デビューであるヤング・ポール監督の拘り、映画愛が溢れている。