おさも

イェリヒョウのおさものレビュー・感想・評価

イェリヒョウ(2008年製作の映画)
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男2人女1人の三角関係。トルコ系移民の男は経済的に成功しているのとは裏腹にドイツに根付くことはできず(かといって幼少期からドイツで育ったため単純にトルコが帰るところというわけではない)、妻と間男は経済的に没落したドイツ人、という構図は面白い。が、移民に対するステレオタイプをそのまま使ってしまっていることは手放しに褒められないというのが渋谷哲也先生の言。

キュウリ収穫マシーンに乗って、流れ作業でキュウリを採っていくシーン、メトロポリスみたいな機械の歯車になった人間、というモチーフの現代的な再現がグッときた。(システムと生態の境目の労働を人が担う)

不倫の表現とか、夫殺しの陰謀とか、ある程度フォーマットにのっとってテンポよく展開する。構図の作り方とか、とても論理的だと思う。

移動の際の車中を執拗に映す。視線をあわせないお互いの思惑の無言の緊張と緩和がある。
間男が夫に雇われる経緯が、飲酒運転で免停になったことから足として雇われるというものだった。車の中に人を入れるのが親密圏への侵入をゆるすことになっている。商売の戦略を語るところなんかも、懐を開けたコミュニケーションの場として車の中が機能している。

自営業者・経営者の孤独みたいな部分もあると感じた。労使の関係でしか人間関係を結べず、労働者は常に経営者から奪おうとする、パワーゲーム。
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