ふじこ

サタデーナイト・チャーチ 夢を歌う場所のふじこのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

父を亡くし、母と幼い弟と暮らすユリシーズ。女性の服を着る事に興味のある少年が、家族や親族、周りの目から夜に逃れてしまうけれど、家族と向き合う事で少し生きる力を得る話、かな。

最初はふーん女装が好きなのか、それにしたって学校にストッキング履いて行くのは不味くない?(ただでさえからかわれているのに的な意味で)
と、思ってたら当然歌い出してびっくりした。ミュージカルだったのかよ。

弟はそんな兄の姿を見て拒絶し酷い事を言う。
子供ながらの残酷さで兄を傷付けるけれど、まだ8歳なんだよなぁ。
母が夜勤等で不在の間面倒をみてくれるオバさん(夫の親族?)は勿論厳しく諌める。特に信心深いようだし、無理解なのはしょうがないのかも知れないけども…。

お母さんが忙しいくて余裕がないのも分かる。夫を亡くして、一人で子供二人を養って家を回さなきゃいけない。
でも、ユリシーズもまた子供なのに。どうして期待ばかりされてしまうんだろう。
子供の論法でいけば、勝手に生んでおいて"普通"ばかり期待されるのは辛いよなぁ。誰もがそう出来る訳じゃないから。

そんな訳で家を飛び出し、夜の街で商売をするドラァグクイーンや若くしてホームレスとして生きる人達に出会い、ご飯や衣服を支援する土曜日の夜の教会に辿り着く。
他愛のない話や、それぞれの境遇、皆が同じじゃないけど誰もそれを責めたりしない、違って当たり前の空間がユリシーズにとってどれだけ肩の力を抜くことが出来たのだろう。ようやく少年らしい顔をしていて良かったな、そこで出会った少年と恋の予感がして良かったなぁ。

と、思っていたらまたオバさんにぶちのめされる。
更には少年を性的に消費しようとする大人も。不幸すぎてめちゃくちゃ悲しくなってしまった。この子が何か一つでも悪い事したのかよ…。

知り合いのドラァグクイーンの一人に家に送って貰い帰宅するけど、そこでもオバさんの酷い言葉に傷付けられる。あまりの言い草に母も怒り、オバさんを追い出すけれど、ここにくるまで息子がどんな扱いをされていたのか知らなかったようでショックを受けているみたいだった。

これまで母もユリシーズが自分の服をこっそり着る事を許していなかったけれど、
"愛してるからね それを疑った事は?"
"何があろうと愛している それは憶えておいて"
"人生は一度きり 正直に生きなきゃ"
"いつも愛してる あなたがどう生きようと"
と歌って、ユリシーズのはにかんだような笑顔で終わる。

歌かぁ~歌…ミュージカルはやっぱり苦手なんだけど、傷だらけのユリシーズが可哀想で、それでも母親が愛してくれているから大丈夫かなって希望もあって、忘れてたけど家出中心配していた弟も態度が軟化したしこの先も生きていけるかなって気持ちになって、良かったなあ。
まだ年若くて柔らかな心が、振る舞いも分からない内に傷付けられて命を投げ捨てる子供がいるような現状はとても悲しいから。
ふじこ

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