ツクヨミ

彼らは生きていた/ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールドのツクヨミのレビュー・感想・評価

4.0
"戦争は意味がない"ことを痛感する。
1914年から1918年までイギリスとドイツが対立した第一次世界大戦。今時代を経て"第一次世界大戦のリアル"が蘇る。
ピータージャクソン監督作品ドキュメンタリー。今作は第一次世界大戦の映像フィルム100時間とインタビュー600時間を映画として編集し圧倒的なリアル感を体験できました。話の展開は大戦が勃発する直前のイギリス国や市民の雰囲気から、終戦後の帰国軍人がどんな扱いを受けたかまで多岐に渡るエピソードを時系列順にインタビュー音声で理解させる演出に痺れる。
今作の演出として素晴らしかったのは最初は白黒映像だが大戦が本格的に始まると画面に色が付く…カラー映像を復元したことだろう。これは兵士達にとっては戦場は別世界のような空間でありそこで体験したことは唯一無二な地獄体験であったことに他ならない。また大戦が終結すると画面は白黒に戻り市民に戻っていく…戦争が彼らに与えた影響は計り知れない。
しかし戦場の狂気をこれほど感じさせられた作品も珍しい。兵士達は当初国に貢献できる淡い期待と不安が入り混じった感情を有していただろう。しかし大戦が始まると仲間は次々と死に死と隣り合わせな時間がずっと続く…多大なストレスは人間の精神を破壊するが、人間は次第に環境に適応し死に関して感情を抱かなくなり、人を殺すことに躊躇しなくなる。"人を殺す"ことが正当化されてしまう…そんな状況をいとも簡単に作ってしまう戦争が恐ろしい。
第一次世界大戦を兵士目線から描き切った秀作。戦争のリアルさを感じたいなら間違いない作品だろう。
ツクヨミ

ツクヨミ