オランジェ

ホテル・ムンバイのオランジェのレビュー・感想・評価

ホテル・ムンバイ(2018年製作の映画)
4.6
同僚に勧められ鑑賞。
一言で言うと衝撃的な作品です。

実話を元にした映画。
ストーリーは、2008年、インドのムンバイでイスラム武装勢力による同時多発テロが発生。歴史ある高級ホテル、タージマハル・ホテルが占拠された。テロリストたちに見つかれば容赦なく殺されてしまう。ホテルの宿泊客、従業員たちは思わぬ恐怖に陥ることとなる。
そんな中、逃げられたにも関わらず、宿泊客を誇りにかけて守ろうとしたホテルマンたちがいた。



本当に衝撃的でした。

人が打たれるシーンは、どうやって撮影したのだ…というほど生々しく映像として残ります…自分も死ぬかもしれないという状況の中、プロとしてお客様を守ろうとしたホテルマンたちの姿はカッコイイと言うよりも、それこそ衝撃的なものでした。私が彼らの立場だったらと思うと、とてもホテルに残れません…また、家族の立場だったなら、お願いだから逃げてという気持ちが先に立ちます。
また、この作品の凄いところは、テロリスト側にも愛する家族がいるのだと描かれていること。テロリストたちは、まだ若く宿泊客(アメリカ人や富裕層など)は人ではないと洗脳されているため、躊躇いなく殺していきます。しかし、途中で殺すことに疲れを感じるテロリストもいて…貧しく苦しさしか知らない若者をいいように使い捨てる、そんな状況に憎しみすら湧いてくる作品です。けれど、やっぱりテロリストも憎くなり、家族を愛しているなら相手にもいるのだと想像力を働かせてくれ!と叫びたくなりました。
この映画では、あらゆる事を考えさせられます。なぜテロリストが生まれるのか、貧富の差、宗教、考え方の違い。

*ネタバレが少し含まれます。

テロや戦争などの悲しいことが起きないためのヒントも、この作品には描かれていました。
ホテルマンの一人が宗教上の理由でターバンや髭を生やしているのを女性客が怖がります。その時、ホテルマンは家族の写真を見せ、ターバンをしている理由を話、その上でホテルではお客様こそが神様。貴女が望むのならターバンを外します。と声をかけます。女性客は、ホテルマンを一人の人間だと理解し外さなくていいと納得し、「怖いのだ」と本音を漏らします。このように真摯に話すことで少しは悲しい争いを無くすことができるのではないのかと思いました。


この映画を観たあとは、胸が苦しく頭がいっぱいで、どのように文字にすればいいのか悩みました。なぜ、こんな悲惨な事件を私は知らなかったのか…とても、ショックです。二度と忘れられない映画でした。
オランジェ

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