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クローブヒッチ・キラーのsymaxのレビュー・感想・評価

クローブヒッチ・キラー(2018年製作の映画)
3.6
信仰に厚く、閑静な田舎町で起こった未解決連続殺人事件…被害者の女性達は、何も縛られ、凄惨な現場には遺体と共に"巻き結び"されたロープが残されていた事から、その犯人は"グローブヒッチ(巻き結び)・キラー"と呼ばれ、人々から恐れられていましたが、10年前にぷっつりとその犯行は止まっていたのでした。

この町に住むタイラーは16歳、信心深い両親の元で育った極々普通の高校生。

ある日、父ドンの車を黙って借りて、両想いの彼女とちょっとイイ感じになったその時、彼女にド変態の写真を見つけられ、彼女との関係は一気にギクシャクした上に、学校中に"変態"との噂を広められてしまうのです。

噂を打ち消すのに躍起になるタイラーでしたが、ある一つの疑念が浮かびます。

"父ドンがグローブヒッチ・キラーなのではないのか"…

更にタイラーは、父ドンの秘密の倉庫に忍び込み、悍ましい写真を見つけてしまい、父への疑念は大きくなるのですが、父ドンはボーイスカウトの団長を務める等、町では皆から好かれている存在。

タイラーにとっても良き父親であり、疑念を振り払おうとしますが、父親の秘密を知ってしまった事で、言動一つ一つに怪しさを感じ、父親を信じたい気持ちとシリアル・キラーではないかという疑念との狭間で悩み苦しむタイラー。

そこでタイラーは、独自に"グローブヒッチ・キラー"を調査している不思議系女子のカッシに、父ドンがシリアル・キラーなのではないかとの本心を打ち明け、初めは鼻で笑っていたカッシと共に父ドンの動向を調査する事に…調査の過程でタイラーは驚愕の真実と思いもよらない恐怖に直面することになるのです…

コロナ禍の中、申し訳ないとの想いを抱きつつ、"ハンバーガー・ヒル"を観た後に丁度良い時間帯での上映でしたので、殆ど前情報無しでチョイスした本作。

偶然にも、"ハンバーガー・ヒル"で熱い軍曹を演じていたディラン・マクダーモットが、怪し過ぎる父ドンを怪演しておりまして…眼鏡を上げる仕草が何だか怖すぎです。

タイラーを演じたチャーリー・プラマーは、"ゲティ家の身代金"にも出演していましたが、透明感のあるイケメンで、父を信じたい気持ちと疑う気持ちで揺れ動く、思春期特有の儚さと危うさを好演しています。

また、タイラーと一緒に"グローブヒッチ・キラー"を追うカッシを演じるマディソン・ベイティは、何処となくキルスティン・ダンストに似た顔立ち…所謂、猫顔ですね…

何よりタイラーの母親を演じていたのが、"ブロークン・アロー"でヒロインだったサマンサ・マシス…時の経過を痛い程感じてしまいました…

本作は、純真無垢だった少年が恐怖の体験を通じて(否応無くではありますが)大人への階段を上がって行くというジュブナイル的な展開の物語であります。

何処か、"スタンド・バイ・ミー"や"IT"の様なスティーヴン・キング的なものを終始感じまして、キングがこの作品観たら、絶対絶賛するなとの思いを持った次第です。

前半から中盤の展開は素晴らしく、また視点もタイラーだけではなく、ドンの目線からも物語を語る構成は良く出来てるな〜との感想を持ちましたが、後半はやや荒さと強引さが鼻に付き、プロットと演者が良いだけに、もう少し丁寧に観客を突き放しても良かったのでは?と"ちらっ"と思いましたが、思わぬ拾い物の一本で、私的には満足な映画館での梯子鑑賞でございました。
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