稲

人間失格 太宰治と3人の女たちの稲のレビュー・感想・評価

3.4
原色(とくに赤)の使い方に蜷川実花を感じる作品。私自身が信じられないほど太宰治を通らずに生きてきた人間なので、自己破滅の闇の奥に鈍く光る魅力みたいなものを感じ取れず、本当に人間失格に思えて、十分には楽しめなかった。
序盤の退廃的な空気感が愉快で(坂口安吾が出てくるところとか)、強い酒を手に取りながら紫煙を燻らせたくなる感覚はなんとなくよかったかも。ただ、そういう表現だろうからまったく問題ないのだけど、中盤から後半にかけてきっと無意味なのではと思えるシーンが散見され、ところどころ集中力が途切れた。一方で、集中力が途切れながらも最後まで観られたというのは「おい太宰、いつ死んでしまうんだ!?」と思わせる引きが随所にあったからなのかなと思っていて、そこはこの作品(というか太宰の人生?)の興味深い点。
忙しなく現実世界を生きなくてはいけない時期に一区切りついたタイミングで、日常に文化的なものを取り入れるためのリハビリとしてふんわり観るのにはうってつけの作品。
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