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人間失格 太宰治と3人の女たちのyukoのレビュー・感想・評価

3.6
個人的には、坂口安吾役の藤原竜也さんがいちばん色っぽいなと思ったのですが、さて太宰治。というよりは、原題どおり彼を取り巻く3人の女性がフィーチャーされたこの作品で、印象に残らないようで残ってしまう山崎富栄(二階堂ふみさん)が最も気になる役どころでした。見た目は控えめ地味で、蜷川実花さんのクリエイションならでは、の、ポップな艶やかさ(ここはやはり、期待を裏切らない静子役、沢尻エリカさんがハマるのでしょう)からは距離のあるキャラクター。それなのに、太宰と入水自殺してしまう富栄の大胆な心は、あくまで彼女の過激な言動などで表現。富栄の部屋で窓から漏れるネオン色の十字架は、まるで苦しい恋の傷痕、そのものに見えました。
一方で愛の象徴である妻の美智子(宮沢りえさん)は穏健なキャラクター。そんな彼女が留守時、愛人に家を綺麗に整理整頓され、心中怒りにも似た虚しさを爆発させるシーンはグッときました。涙が止まらなくなる美智子が、子どもたちとふざけて顔に塗ったくったのは、藍染の紺藍色。結局のところ、太陽の光を浴びて家族の洗濯物を干すのは美智子、彼女であり、実際、津島美智子は太宰没後も、85歳まで生を全うしています。
女心の光と影を色彩で表す蜷川マジック作品。楽しませていただきました。
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