Junichi

ジョジョ・ラビットのJunichiのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
5.0
「でも僕は踊らない。ダンスは失業者がやることだ。」
「自由な人間がやることよ。何にも囚われない人。」

【撮影】10+
【演出】10+
【脚本】10+
【音楽】10+
【思想】10+

映像の色調、構図、衣装、音楽
そして
映画前半にちょいちょいはさまるギャグや子ネタ
それらにタイカ・ワイティ監督のセンスとこだわりを感じます

生涯best3に入る程の大傑作

映画冒頭
アドルフ・ヒトラーに熱狂するドイツ人の映像を背景に
ビートルズの"I wanna hold your hand"が流れます

ナチスの信奉者と
アイドルファンに
違いなんてあるのか?と
そんな強烈なメッセージを叩きつけます

対象の偶像が
ヒトラーかビートルズかで違うだけで
盲目な信者であることは同じでしょ?と
自分も同意見です

ヒトラーの偶像性は
タイカ・ワイティ本人が
ヒトラーをコミカルに演じることで風刺されます

映像前半
主人公の少年ヨハネス・"ジョジョ"・ベッツラー(ローマン・グリフィン・デイヴィス)の
ユーゲントでの訓練生活がコミカルに描かれます
笑いのセンスがコメディの王道
大好きです

映画中盤から
母親のロージー・ベッツラー(スカーレット・ヨハンソン)と
匿われているユダヤ人少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)
この二人との交流が軸になります

スカーレット・ヨハンソンが素晴らしい
強く優しく
どんなに困難な状況でも諦めず
ユーモアがあり
精神の自由な人
ジョジョに愛を(ダンスを)教える人

そしてトーマシン・マッケンジー
ジョジョの"姉"として
ジョジョの精神の成長を促し恋を教える

戦争を題材にした
少年の成長物語
まさしく正統派のBildungs Roman

映画後半は涙涙
前半のコメディがきちんと活きている
見事です

ところで
ゲシュタポの家宅捜索
エルサがジョジョの姉インゲを装い
自分の(実際はインゲの)誕生日を
証明書を見ないで証言させられる場面

「5月1日」と証言するも
実際は「5月7日」

これは
数字の1と7の書き方が
ドイツ人ではまったく同じで
7の縦線に、チョンチョンと短い横線を引いて区別していることによります

このシークエンスでのクレンツェンドルフ大尉も素晴らしい

最後に
ユーゲントの教官クレンツェンドルフ大尉を演じたサム・ロックウェルに注目
ジョジョにとっての父親的な役割を担いました
最後に大きな見せ場があります

フロイライン・ラーム(レベル・ウィルソン)も味があってよいです
くすりとさせる存在感です

故淀川長治氏ではないですが
映画からたくさんの愛を教えてもらいました
本作もその偉大な映画の一つです

すべての愛の人に本作をオススメします
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