ぶみ

バルーン 奇蹟の脱出飛行のぶみのレビュー・感想・評価

バルーン 奇蹟の脱出飛行(2018年製作の映画)
4.0
実話をベースとした1982年の『気球の8人』を、ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ監督、フリードリヒ・ミュッケ主演によりリメイクしたドイツ製作のドラマ。
東西冷戦下にある1979年の東ドイツにおいて、熱気球で西ドイツに亡命を図る家族と、彼らを追う秘密警察シュタージの姿を追う。
『気球の8人』は未鑑賞。
物語は思いのほか気球のシーンは多くなく、前述のように気球で亡命を図る家族と、秘密警察による追いつ追われつの鬼ごっこをメインに描いていくが、これがまたシンプルであるが故に、中々スリリング。
良作『タクシー運転手 約束は海を越えて』でソン・ガンホと共演し、ドイツ人記者を演じたトーマス・クレッチマンが、本作品でもシュタージの捜査官を好演しているが、クレッチマン自身も西ドイツに亡命した経歴を持っていることから、まさに絶妙なキャスティング。
何より気球というプリミティブな方法で亡命を図るとは、いつの時代の話なのかと思いきや、実は私の幼少の頃の出来事だったと言う事実に驚くばかり。
手に汗握るシーンの連続の末に迎えたエンドロールを余韻に浸りつつ何気なく眺めていたら、映画監督であるローランド・エメリッヒに対する感謝の意が示されていたため、少し調べてみたところ、この出来事の映画化権は『気球の8人』を製作したディズニーが保有していたが、エメリッヒ監督の口添えにより、ドイツでの製作が可能となったとのこと。
当時の文化や、誰もが監視者かのような視線と言った閉塞的な空気感が見事に再現されており、これもまたドイツで製作されたからこそのもの。
サスペンス感を助長させるベタな演出も心地良く、一級品の冒険活劇を見せてくれるとともに、当時の空気や歴史を知るにはうってつけであり、その時代を生きた人々がどんな思いを抱いていたかに想いを馳せる良作。

「チャーリーズ・エンジェル」見てるだろ?
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