すあまさえ

新聞記者のすあまさえのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
4.3

世の中は不条理だね。
この映画は良い映画だね。

吉岡を演じるシム・ウンギョンさんと、杉原を演じる松坂桃李さん、どっちも演技が抜群にいい。

本田翼ちゃんも物語りを良くしているし、吉岡の上司の北村有起哉さんも、杉原の上司の田中哲司さんも、映画に緊張感と深みを出している。

新聞記者。
実際に中日新聞社会部の望月さんという女性記者をモデルにしている。
こうやって闇に飲み込まれていった真実が、報われなかった記者やご家族や当人が、たくさんたくさんいるんだろうね。

なんで政治家や政府は「覚えていません」「書類がありません」で死なずに平然と生きていて、責任感の強い記者たちが犠牲になっちゃうんだろう。責任を取らなくちゃいけないんだろう、潰されなきゃいけないんだろう。おかしいよね。

私たち、このままでいいんですか?

真実を知ってしまった以上、それを見なかったことには出来ない。
そうだよね。そうあってほしい。自分もそうでありたい。純粋な目で吉岡は言う。

けどさ、吉岡さん、人間は思っているより弱くて、大切な人の事を考えると、リスクを取れなくなるんだ。私も悲しいよ。
だって、自分が黙っていれば、自分が黙ってさえいれば、安定したキャリアと家族の笑顔がみれるんだもん。
杉原をただ責める訳にはいかない。

でも悔しいよね。
真実を、ただ真実を知りたいし、ただ真実をみんなに伝えようとする事が、どうしてこんなにもむずかしいんだろう。
もうよくわかんないね。

ただ1人の、特に何も知らない一般人の女性からすると、本名を公開して杉原がもし戦ってくれていたとしたら、その妻と家族は、あなたの事を本当に尊敬すると思うよ。一緒に戦いたいと思うよ。責めたりなんてしない。手を握るよ。

だって、そうじゃなきゃ、死んじゃったり上司と同じになっちゃうかもしれないじゃない。私たちの事を守るなんて考えなくていいよ。私が守ってあげる。

最後に杉原は「ごめん」って言ったんだよね、松坂桃李さんのあの演技は秀逸。
きっと、終わり方からみても、吉岡の望んだ未来はこなかったんじゃないかな。

だとしたら辛すぎるよ。
お願い、お願いだから、吉岡を守ってくれる人がいますように。
すあまさえ

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