トゥーン

新聞記者のトゥーンのネタバレレビュー・内容・結末

新聞記者(2019年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

日本アカデミー賞のレベルが分かる映画。日本の市場レベルはこんなもん。
この映画が現実の政治問題と似せて作っているのは一目瞭然だが、ひとまずフィクション映画として、酷い。
フィクションとしてのエンタメ性が極端に低い。脚本の構成自体に緩急もなく、内容が薄っぺらい。いつまでたっても、予告編で見せた部分をだらだらと描き、しかもTwitterやヤフコメで見るようなレベルが続く。驚きが一切ない。ちんたらと進む割りに、資料がすぐ見つかったり、大事な部屋に通してもらえたりとご都合主義のオンパレードでイライラする。ラストに二人が何に驚いているのか意味が分からない。上層部からの圧力がかかるのは目に見えて分かっているし、そのようなことは劇中でも明言していた。それにもかかわらず、絶望するのは自分たちが正義を貫けば悪は何もせずとも手を引くという淡い希望というか馬鹿だと言っているのか。何でもいいが、この結末までの展開は前半1時間までに終了させておいて、そこからのフィクションでいかに見せていくかが大事なのではないか。悪だとみなしている政府側の人間にフォーカスして、多面的に描くことで、深みが増す。どれだけ浅くて、予定調和な映画を作ってしまったか反省してほしい。
さらに、現実の政治問題を取り扱っている以上、ドキュメンタリー的側面も持っている。しかし、それも酷い。客観視する努力も感じられず、見た後に自分の中での問題化がされないようになっている。政府=悪という片面しか見れず、頭の悪さが露呈している。これでは左翼にしか受けない。本来、やるべきことは、政府の善性や改ざんなどに走らなければいけない理由、必要性を描いてもなお、政府=悪だと思わせることである。裏テーマに留めておくべきことを前面に出しすぎた。Twitterでも見ておけば済む話であり、自分たちの叶わなかった夢を虚構で英雄化しているだけ。ルサンチマン映画。これを現実のことだと丸呑みしてしまえば、それこそ情報操作に引っかかっているのだ。
脚本のゴミさに加えて、演出も何もかも酷い。まずは映像の色。内閣情報調査室が悪どいことをやっているのを示すために、陰湿な青色にしている。あそこまで分かりやすく陰湿にする必要があるのか。照明の当て方もわざとらしくて気にくわない。
カメラも手持ちを多用して、不安を煽りたいのだろうが、わざとらしい横揺れが気になった。全く映像が頭に入ってこない。不自然すぎる。この映画が虚構で塗り固められていることを示すために、巧妙に張られた不自然さなのだとしたら、天才だ。もしそうでないなら……。
左翼でも右翼でもいいが、もっと自然に思想を形成できるような質の映画を作ってほしい。単純明快な構図対立は社会派作品には要らない。そういうのを必要とするなら、昔のヒーローものでも見てればいい。
トゥーン

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