Lisn

新聞記者のLisnのレビュー・感想・評価

新聞記者(2019年製作の映画)
4.0
丸の内ピカデリーにて鑑賞しました。

面白かったといったら、なんだか違う気がする。
考えさせられる映画。政治映画ということで、エンタメ感は一切ないです。

この映画は、たくさんの人の目に触れられるべきだと思います。
本作では、明らかに元ネタが分かる2つの問題を取り扱っている。
・森友学園、加計学園問題
・女性ジャーナリスト伊藤詩織準強姦の被害

女性ジャーナリスト伊藤詩織準強姦の被害の事件では、
見た目も、本作の被害者女性が伊藤詩織に似ていました。

この映画に好感が持てたのは、
大学新設計画を、細菌兵器、軍事利用を絡めていたりして、
問題を押し広げて、取り扱っている点でした。

私たちの無関心で、「知らぬ間に」いろんなことが
決められていくかもしれないよ、と警鐘を鳴らしています。

ツイッターで事件を検索しているシーンや、
そこで行われている誹謗中傷の数々は、生々しい。

手持ちのカメラワークが、よく使われていて、
その見にくさも、不安感をあおる映像となっていて良かった 。

主題歌は、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDの
「Where have you gone」。
コーラスで、ELLEGARDENの細美さんが参加しています。なんか、感動した……。

脚本も、丁寧に描かれていて素晴らしかったし、作り手の熱心さを感じました。
左派てきな感じみたいですが、私は一方の側から描いているというあり方もいいと思います。

こういう、どちらが正義かわからない問題は、
どちらかが正義だと主張して描くということは大切かもしれない。

神崎の部屋で、吉岡がいう、
「私たちこのままでいいんですか?」
それは、観客の私たちに向けられているかのよう。

このままでは、良くないのはわかっている。
そして、このままでは、きっといられないということも分かっている。

この映画を観ていると、
すべてがフィクションなのか?
と考えさせられます。

でもどうすればいいのだろう?と、
立ち止まって考えさせられる作品。

答えにはたどり着けないけれど、
考えることを続けるべきだと信じたい。

だからこそ、こういう政治映画は、これからもっと作られていくべきだと願います。

誰かにとって正しいことは、誰かにとっては正しくない。
それは、こういう政治問題では一番、直面する問題なのだと思います。

またこの映画は、作品だけでなく、
作品の取り扱われかた、制作過程も含めて、
ひとつの作品としてメッセージを提示しています。

公開直後に公式サイトでサーバーダウンが発生して、
ネット上では「映画の公開を妨げるサイバー攻撃?」「安倍政権による嫌がらせか」との声も上がったり、
制作スタッフを集めるのにも苦労を、
本作のエグゼクティブプロデューサー・河村光庸さんがインタビューで語っていました。

忖度することが当たり前のようになった今に、
この映画に関わったすべての人が覚悟を持って制作してくれたことに、尊敬と感謝を表します。

すべての無関心な私たちが考えるべきことを、この映画は問いかけています。
そして、河村光庸さんのような大人がいてくれて良かった、
そして、こういう大人になっていかなければ、と思いました。

また、最近、『図書館戦争』を観て、言論の自由とは何か。
私たちの子供が、もしかしたら自由に本が読めなくなるかもしれないという未来について考えさせられたわけだけど。

私たちはどこへいくのでしょうか。

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2019.9.25 丸の内ピカデリーにて鑑賞。 
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