るるびっち

轢き逃げ -最高の最悪な日-のるるびっちのレビュー・感想・評価

4.1
不思議な作品。
普通はひき逃げされた被害者遺族をメインに持ってくると思う。ところが、ずっと加害者側の動揺を描く。
初めはいつまで加害者の件(前菜)やっとるねん、早くメインディッシュの被害者の父親を映せよと思った。
しかし、狙いは普通のひき逃げ映画ではないようだ。

加害者目線で、ひき逃げを描くのが意外だった。
脅迫状が来て、加害者が脅されながら事件をやり過ごそうとするサスペンスかなと思ったら、加害者がすぐに逮捕される。
狙いが解らなくなった。
これは誰が主人公なのだろう?
水谷豊が出るのが遅すぎる。
のんびりした警察の職人感が、妙なリアリティというか実務感があるのだ。淡々とした実務感が妙に興味を引かれる。
サスペンスドラマとも、ちょっと視点が違う。
そもそも先入観で、ひき逃げで娘を失った両親の人情噺だろうと高を括っていたから、どんでん返しに驚いた。

人間は思わぬことをする。
間違いをしない男が、間違いを起こす。
親友を内心憎んでいる男は、実は憧れてもいるので彼がいないと困ってしまう。なのに矛盾したことをする。
被害者の父親もそうで、本来探偵めいた事をする人間ではないのに、娘の喪失感を埋める為、らしくない行動をする。
水谷氏が描きたかったのは、そうした矛盾した人間の側面だったようだ。
動物図鑑の動物の目が悉く隠されているのが、犯人の異常性を現わしていて面白い。このアイデアだけでも優れモノだ。
思わぬ才能を見た。
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