Mika

行き止まりの世界に生まれてのMikaのレビュー・感想・評価

4.5
衰退していく町と道連れになるかのように悪化する家庭環境。
その背景には親も受けてきた暴力や差別があって、せめて自分の子供だけはまともな人生を送ってほしいという願いがあるのに、それを教える方法や葛藤が暴力や威圧になってしまうという悪循環が、苦しくもどかしかった。

誰だって幸せでいたい、大事な人には幸せでいてほしい。
全員がそう思っているのに、幼少期から抱えたトラウマやそこから逃げてきた代償が、悲しいことに願いから遠ざかる人生を作ってしまう。

幼少期という1人では敵わない、逃げられない時に、頼れる・守ってくれる大人がいない苦しさ。甘えられるはずの親が敵になってしまう残酷さ。
第三者が「つらい」「どうにかならないのか」など思ってしまうことも、無責任だと感じる難しい実態だと思った。

ザック、キアー、ビンの同じ時間を過ごしていた家族同然だった3人が、各々の決断で進む道が大きく変わっていくところに人間味を感じた。
顔つき・話し方・感情の起伏も人生と相まって変化していくのがわかりやすく記録されていた。

結果や素行の良し悪しで判断されてしまう社会だけど、どんな出来事にも各々のいろんな葛藤不安恐怖懇願があるんだと感じられた。

スケートボードをするシーンだけは明るく爽快で、みんなが生き生きしていた。
実際はスケートボードでは解決しきれない問題で溢れていたけれど、
彼らにとってスケートボードをしている時が、心から救われる・純粋に人生を楽しめる唯一の時間なんだなと伝わってきた。

過去のトラウマから前に進むために日々記録し、問題に向き合い、一つの映画として形に残したビンの勇気を称賛したい。
Mika

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