ハヤシ

スウィング・キッズのハヤシのレビュー・感想・評価

スウィング・キッズ(2018年製作の映画)
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舞台である朝鮮戦争下の韓国側の捕虜収容所周辺にはあらゆる対立構造がある。資本主義 vs 共産主義というイデオロギーをベースに、戦争当事国としての韓国 vs 北朝鮮、それを動かすアメリカ vs 中国、収容所内では取り締まる米兵(ヤンキー) vs 捕虜とされた北朝鮮兵、捕虜の中でも資本主義に染まった反動分子 vs 祖国への忠誠心を忘れないアカ、収容所(共産主義者)を近くに置きたくない巨済島の住民たち vs 収容所の捕虜たち。さらには白人から黒人へ、黒人から東洋人へ、東洋人から黒人への差別意識も存在する。さながら火種のデパート。

ギスをはじめとした捕虜たちは主に自らを表す語として「社会主義者」ではなく「アカ」を使っていて、侮蔑語なのに何故だろうと思っていたのだけど。もし、主義だなんだはよく分からないものの「祖国に忠実な者」という意味で、日頃投げつけられる「アカ」という言葉を使っているのだとしたら…と考えるとそんなfuck ideologyなことってない。Nワードの例外的使用と同じような意味合いなのか?いずれにしてもここちょっと詳しく知りたい。

アカだと思った人に対して住民が石を投げるシーンとか、太陽を反射して靴の裏が光るシーンとか、本当に挙げ始めたらキリがないぐらいウワ〜となるシーンがあったけど、やっぱりラストの回想の中で踊る2人のシーンが凄い。最初から音楽は無くて最後にドラムが入るだけのはずなのに、ずっと音楽が鳴ってるんだよね。そういう感覚がある。

ギス同志、というかド・ギョンスとんでもないな〜。タップダンスを見て音に目覚めるギスのシーンが大好き。ギスの言葉だけ聞くと完璧なアカなのに、観た者にそれだけではないという実感を残す演技、素晴らしかった。

「おいチビ」と言われてしっかり「じじい」と言い返す強かなヤン・パンネの人物造形も良かった。外で会ったジャクソンに「밥 먹었어?」するのも。

忘れたくないシーンや台詞がたくさんある映画だった。もう観たくないけど、また観たい。
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