もちお

天気の子のもちおのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.5
ここまで開き直られると天晴れという他ない。
一本気をひたすら貫く姿勢に感服。

キモい厨二青春アニメでお馴染み深海誠は自身の出自であるギャルゲーの文脈「社会はクソ大人はカス僕たちだけが可哀想」という特定のレイヤーに優しく寄り添う心地よい肌触りを一貫する芸風なのは今作も同様なのだが確実に進歩を感じられてオタクの慰みものには収まらない逸品だと思う。

これまでの型月葉鍵アニメを一般向けに薄めたような可哀想ポルノと今作の違いはバックボーンのディティールに一切触れてないことが特に顕著。「ほらほらかわいそうだろォ泣けよほらァ」みたいな押し付けがましさは無いとは言えないが抑えめ。そのかわり「え?なんで?」という箇所に対するフォローも敢えて捨ておいている。一応彼らの立場は明示されてるがセリフ一言程度で済ませてしまうので「こんな若い子がこんな事いうなんてそりゃあねえ」となるか、「え?こいつ全然可哀想じゃないじゃん何があったのねえ教えてよこれで説明したつもりなのかよ都合良すぎというか感情移入させるためにはしっかり説明して感情を言語化する心理描写をきちんとしてわかりやすく伝えるべきじゃんそれがアニメのあるべき正しさでしょうYO!」となるか。視聴者に委ねる塩梅がこれまでと明らかに違う。異能を酷使して自滅するってSF擦られお約束においても付与する存在すらも徹底して描かない。舞台設定までもここまでぼんやりした描写なのは、新海氏が視聴者を信頼して作った証なんだと思う。テーマの押し付けではなく素材のまま提供。そういう意味では薄くてスカスカってのは正しい。

オトナが普通に観ればツッコミどころしかない。
でもここに新海誠の信念が滲み出る。

思った通りにやれ。周りが納得する理由なんて要らない。

研ぎ澄まされた新海節ここにあり。感服しました。
若者たちに「君たちは大丈夫」っていえる大人でありたい。

無駄と知りつつ数年間祈りを捧げ続けていた陽菜を見て
自分のことしか考えてなかった穂高の頭によぎるもの。
短い秒数だけどすごいシーンだと思う。
ここで何かを感じることができるか否かでしょうかね。

対して穂高は検索が上手くなっただけ笑。でも今はそれでいいと思う。
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