バタンキュー

天気の子のバタンキューのネタバレレビュー・内容・結末

天気の子(2019年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

匠の逸品、ここに極まる。的な。

まず、記録的な商業成績を残した前作で期待のハードルの高さが上限突破した状況で、さらに挑戦的で伸びやかな作品を作り切った製作陣を尊敬。

作品の宿命として「君の名は」との比較は避けられないが、話の進む方向性がそもも違うので比べて評価するのはナンセンスで好みの世界。でも、どちらか聞かれれば私は「君の名は」のほうが好き。

映像美、アニメーションでの描写の臨場感や奥深さは更に洗練されており、溜息が出るほど。特に今回の主役ともいえる「雨、雲、新宿」の描写についてはアニメであるがゆえに実写を超えているほどと思う。

セリフ回しが軽妙で、見ていて安心感がある。人物描写も今風で違和感がない。「2019年の東京と、そこにいそうな人達」を丁寧に写した作品。10年後にまた観たいな、と鑑賞中思った。

本田翼は前評判が悪かったが、観てみれば全く違和感は無く、魅力的なキャラクターに仕上がっていると思う。ウザキャラかと思ったが立派なサブヒロインだった。

中盤で意外な人物たちのサプライズ出演に唖然とし、胸が熱くなってしまった。これは反則級の飛び道具。

作品を俯瞰すると、ボーイミーツ ガールでありジュブナイルでありファンタジーであり、終盤の展開はいわゆるセカイ系。

後半の展開は好みが分かれるかもしれないが、そこまで観客を突き放してはいないギリギリの線を維持している。アニメファンに意図的に議論のポイントを与えているようにも思う。全ては監督の掌の上か。個人的には終盤の展開はとても好き。

前作&過去作と比べても対象年齢は低め(?)高校生→中学生くらい。というかアニメ初心者を意識してハードルを下げている印象。前作より明らかに大衆に迎合してきており商業的にも勝ちにきている印象。だけどそれが作品世界を変に汚していないところは好感が持てた。おそらくプロデュース陣の手腕なのでしょう。

やたら褒めたがツッコミどころも多い。
主人公の家出の動機がわからん(親に迷惑かけすぎ)ヒロインがあの能力を身につけた経緯や背景も分からん。各キャラの背負う事情について説明描写が少なくて考察班への投げやりに見える。小栗旬のキャラが後半は空気(というかジャマ)で勿体ない。リーゼントである必要がない。平泉成のキャスティングが直球すぎる。このへんは観ていて気になってしまったので残念だった。

ただ、良き作品だったのは確か。アンチ感覚で距離を取るのは勿体無い作品です。