大一

天気の子の大一のレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.5
世界を犠牲にして1人の人を愛せるか。
新海監督からそう突きつけられるかのような作品だった。
本作の主人公である帆高はひとりぼっちで隠れるように生活していた東京で、1人の少女に出会う。少女と少女の弟と3人だけで仕事をつくり、東京で暮らしていこうとするがそれもある理由によって叶わなくなる。
彼女は世界の犠牲になるのだ。とつきつけられ、まわりの大人も、社会も、誰もそれにおかしさを感じない。
ただ1人帆高だけが少女のために世界に抗おうとする。
その帆高の純粋で無垢な愛情が、大人になるにつれ社会の中に順応するにつれ、押し殺してきた観客者に、愛の形として真っ直ぐに突きささる。
これまでの新海監督の作品の中でも1番手がかけられている背景描写は実写よりもリアルで美しく、感動的であり情緒的である。
また、愛の形を描くと同時に都市の中での存在として、15,6の子供がいかに都市の中において無力で生きる力を持たないかを考えさせられる。働く場所、寝泊まりする場所、滞在する権利、それらが彼らには存在せず社会というものにただ翻弄される。しかし、それでも決して彼らは助けを求めようとはしない。大人にも、神にすらも、ただ放っておけと劇中で叫ぶ帆高の強い願いはそんな社会でも彼ら自身で生きる意味を見出した希望の叫びに感じた。
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