タリホー

天気の子のタリホーのレビュー・感想・評価

天気の子(2019年製作の映画)
4.2
劇場で観て以来2度目の鑑賞。
新海誠監督の作品の魅力は映像だけでなく“モノローグ”にある。美しい比喩や言葉を用いて、誰もが心の奥底で感じたことのある感情を表現してくれる。写実的な美しい映像と、感情を動かすモノローグに惹きつけられるのだ。

今作は新海監督がこれまで描かなかった東京の裏側を描いている。バニラ広告に始まり、ラブホや風俗店、そして拳銃。かなり意欲作になっている。

街に埋め尽くされた看板や商品などに多くの実名が登場することで、リアリティが増し没入感が生まれる(わざとらしく商品名が見えるように天然水を持つ帆高には少し冷めてしまったが)。

写実的だがアニメならではの現実を超える映像が楽しめる。雨の飛沫が街のネオンに照らされてカラフルに輝き、雨空が晴れビルの窓に光が反射する。あまりにも美しく素晴らしい。

今作で拳銃を登場させた理由について考察してみた。
帆高と陽菜は大人や制度といった“社会”と戦っている。子供の力ではどうしようもない、漠然と立ちはだかる大きな壁。帆高は拳銃、陽菜は巫女の力と、自分では制御できないその力は“思春期の感情”として表しているのかもしれない。そして、“社会”によって抑圧された“思春期の感情”は制御不能となり暴れ出す(帆高の場合は発砲として)。

劇場での鑑賞では気がつかなかったが、陽菜は消えてしまったのではなく、自らの意志で人柱として消えたのか。帆高が晴れを望んだから。愛する人のためなら自己犠牲をも厭わない2人だからこそ応援したくなる。

最後まで帆高の家出の理由は明かされない。オープニングの顔の傷を考えれば、親との喧嘩といったところだろう。だからこそ捜索願が出されていることに驚いた表情を見せたのだ。きっと家出は些細な理由なのだろうが、16歳の少年にとってはそんなことでも逃げ出したくなるほどの大事件なのだ。帆高は東京に来て様々な人と出会い、本当に大きな事件と遭遇したことで少しだけ成長できたのだと思う。
圭介は逃亡前の帆高に「もう大人になれよ少年」と言った。しかし3年後には「まあ気にすんなよ青年」と、、まだまだ大人にはなれないが彼は少し成長できたのだろう。

そして、今作は圭介の成長物語でもある。会社名のK &A は圭介&明日香であり、常に結婚指輪を2つはめている圭介。今は亡き妻への愛が溢れている。大人になって自分の気持ちを押し殺す日々、自分の気持ちに素直に生きる帆高をみて圭介は変わるのだ。


新海監督はサプライズとしてこれまでの作品の登場人物やアイテムを出演させることが度々ある。今作は前作「君の名は。」の登場人物が惜しみなく現れてファンとしては幸せでいっぱいだ。そして、初代プリキュアの登場にも沸いた。
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