《心温まるRPGエンターテイメント》
【ピンポイントなテーマ性】
近年ピクサーは普遍的で誰もが共感しやすいテーマ、もしくは抽象的で解釈に幅を持たせたテーマが魅力だった。しかし、今作は兄弟について、兄の愛についてというとても具体的でピンポイントなテーマ。個人的には前者の広いテーマ性が好きだったが、今作は今作で温かみのある物語だった。
【一番好きなシーンは】
イアンが、やりたい事は全て兄としていたと気づくシーン。実は兄はある人物の代わりを務めてくれていたと悟った場面でもある。これは兄を持つ者に関わらず、人によって幅広く重なる人物がいるかもしれない。
【秀逸な設定】
舞台設定からビヨンド・イマジネーション(笑)。兄弟愛を描くために、魔法と現実を絡み合わせるなんてだれが考えつくんだろう。どう考えても結びつかない物を掛け合わせるというピクサーの独創性を改めて感じた。見てみるとやっぱり面白い。なにより、いい具合に現実世界とリンクしているので興味が湧きやすい。
【ヲタク感溢れる怒涛の伏線回収】
ただ、佳境に入る前までのアドベンチャーは個人的好みとしては平均点。ファミリーエンターテイメントに尽くした展開といった印象。マンティコアのコーリーが突然暴走したシーンは、唐突過ぎて「え?」と疑問も感じた。しかしそこからが面白く、クライマックスに近づくにつれ細かい伏線回収が怒涛のように続く。「もう一回出てきた」の連続。もはやクレイジーな伏線の散りばめ方・拾い方。最上級の褒め言葉として「オタクっぽい」という言い方が似合う。伏線回収が続くクライマックスはちょっと爽快だった。世界観も相まってRPGのよう。
【公開当時の残念だった点】
字幕版の公開が少なかった事。吹き替えは見事だったが、トム・ホーランドとクリス・プラットの当て書きのようなキャラクターだったので、今作こそオリジナル版の意義もある。最近は実写作品までオリジナルが排除されてるような気がして、ちょっと残念な傾向。
【総括】
先述した通り、個人的には広いテーマのピクサー作品の方に魅力を感じてしまうが、今作は温かな物語とユニークな世界観、そして伏線回収も相まってRPG感が楽しいエンターテイメント作品だった。