ヴぇる

黒い司法 0%からの奇跡のヴぇるのレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
4.5
個人的に社会派作品としてはベスト3に入る。言葉も出ない程丁寧に作られており、映画としてのカタルシスはツボを抑えている。もちろん驚くべき差別的真実は脚色される事なく、淡々と映し出される。しかしそれにも負けずめげす戦い抜く人間としての矜恃や在り方生き方すら教えてくれる映画だ。

今作は137分というまずまずの長尺で社会派作品なため取っ付きにくさはあるかも知れないが、序盤の緊張感からの緩和は滑らかなバランスを演出しており導入としては悪くない入りだ。

また、コアである死刑囚のための弁護、この現実を分かりやすく物語に乗せて説明してくれるため頭はクリアな状態で、疑問は一切ない。序盤から脚本が丁寧で優しい感触を受けた。
ただ、逆に言えば分かりやすぎるという欠点もあるにはある。ザルな誤認逮捕は今作の衝撃を強く与えるが検察側の無能な所に若干の違和感はある。まぁしかしこれは表裏一体なので仕方ないのかも知れない。

また今作の素晴らしい点は言葉の一つ一つが重い事で、その思いが言葉が連続して立て続けに攻め立てる事だ。
黒人に立ちする仕打ちは、彼らを疲弊させ諦めの境地へ誘う。彼らは人生の中でそれを嫌という程体感しているのだろう。だからこその辛い言葉現実実がある。

現代のアラバマ物語と一口に言ってしまうには非常に早計だが、社会問題を頭に入れている人間ならば見なければならない作品だ。

総評としては、パッケージとしても勧善懲悪としてよく出来ているし、日本人好みの耐えて耐えて最後に勝ち取るという内容だが、そのディテールは人種の違う我々には体感する事は難しい。しかしこれはそれらの問題を多種多様な広義的な問題として考えるきっかけにしてくれる授業の様な作品だ。
ヴぇる

ヴぇる