持て余す

犬鳴村の持て余すのレビュー・感想・評価

犬鳴村(2020年製作の映画)
2.4
この手のホラー映画ってお仕事感と腐敗臭を感じちゃうことがある。

とは言っても、これはまったく個人的な感想──感覚なので、殆ど言いがかりかもしれないし、好みをそういう中傷めいたものにすり替えてるんじゃないかとも思うくらいなのだけど、それでもそう思ってしまうことがある。

日本のホラー映画の総てではないし、特定の監督だとか出演者だからってことでもないのだけど、このジャンルの第一人者の清水監督のホラーでさえ、そうしたイヤなところを感じてしまう。

詰まる詰まらないというのはどこまで行っても好みに左右されるし、映像の加工技術がどうのこうのは予算にまつわるところが大きいし、『リング』や『呪怨』のヒットで粗製濫造されたJホラーに新味を求めるのはなかなか厳しい。それは理解している。

それに清水監督のホラー演出は流石で、この作品でも随所に「おおッ! 怖ッ!」ってなるし、歪で気持ち悪いというツボを的確に捉えたものなのだと思う。

ただ、それだけにストーリーが練られていないように感じてしまう。ホラーだから整合性には目を瞑ってもいいとは思わないし、恐怖描写のために細かいところは気にしないでいいとも思わない。物語をおざなりにするなら、『本当にあった! 呪いのビデオ』のシリーズの方がよほど楽しめる。

設定が割と凝っているのが災いしているところもあると思う。わらべうた、ダムに沈んだ村、犬化、心霊スポットと謎の死、さらには主人公と家族の関係性とかも絡んでくるので、これを2時間未満のお手軽サイズに収めるのはややムリがある。

理不尽や不条理が恐怖を喚ぶのは理解できるのだけど、登場人物の行動にあまりに不可解なところがあると、恐怖よりももやもやしたものを感じでしまう。現実世界では「気紛れ」で済ませてしまえるものでも、虚構の世界ではなにがしかの理由づけが必要だと思う。

そうしたところが解消されないまま残っていると、お仕事感と腐敗臭を感じてしまう。『としまえん』みたいなどちらかと言えばアイドルを見るためのような映画ならまだしも、正面切ってホラーを描くならば、ちょっと物足りない。そうすると『恐怖回避ばーじょん』も気の利いたお遊びというよりも悪ふざけに見えてしまう。

予告映像やポスターはとてもいいと思ったけどな。
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