頑張って作っているとは感じましたが、傑作と言うには今ひとつかも。ホラーにつきまとう課題として実体がわからないもののほうが怖い、というのがありますが、この映画でもなにかわからないものであった前半の方が怖いんですね。正体がある程度明らかになってしまうとビジュアル的な間抜けさも手伝ってどうも悲劇というより喜劇に見えてくるのが困ったところです。特にクライマックスの犬憑き女は妙に長々と変身過程を見せる必要があったのか疑問でした。それを何故か逃げずに眺めている主人公たちもどうかと思いましたが。
犬鳴村の話と病院の霊の話を混ぜたのも果たして良いやり方であったのか。二つの話に関連性がないので、ストレートに恐怖感が盛り上がりません。病院の霊は「物陰に潜む人ならざるもの」という映像でビックリスイッチとしては機能していましたが、話の本筋とは別なので、結局は単発の驚きでしかありません。
個人的な最大の見所は女優さんたちの演技。特に高島礼子さんはベテランになったとは言え綺麗どころのカテゴリーの人があのような畜生芝居をされるとは感服です。若いカップルの彼女役を務めた大谷凜香さんも途中からかなりの汚れ役になってしまうので、そこは役者さんも大変だなと思って観ていました。他の俳優さんたちも総じて悪くない演技だっただけにお話の軸が定まらないのと後半、恐怖演出が安っぽくなってしまうのがもったいなかったですね。
