醤油屋の弟子

火口のふたりの醤油屋の弟子のレビュー・感想・評価

火口のふたり(2019年製作の映画)
3.2
下田逸郎さんの名曲「早く抱いて」がテーマ曲という事で観ました。

この映画の面白さは、シンプルな設定ながらも、二人の関係性の深さと、彼らが抱える時間の重みから生まれていると思います。直子の誘いは一見すると突飛ですが、彼女の自由奔放な性格と、結婚を前にした焦燥感がそうさせたのかもしれませんね。一方の賢治は、戸惑いながらも直子を受け入れてしまいます。しかし、彼がただ欲望に流されているわけではないことは、二人の会話や表情の端々から伝わってきます。かつて愛した女性が結婚するという現実に直面しながらも、彼は彼女の存在の大きさを改めて感じるのです。

また映画は性愛のシーンが非常に多く、それが物語の重要な要素となっています。しかし、それらのシーンは単なるエロティシズムを目的としたものではなく、二人の関係性や感情を深く描写するための手段として機能していると思います。

賢治と直子の肉体関係は、単なる欲望の発露ではなく、彼らの魂の交歓であり、言葉では語り尽くせない愛の表現でもあります。彼らの抱擁や触れ合いの中には、過去の記憶や、現在の刹那的な幸福、そして避けられない別れへの予感が込められています。私は、二人の関係が単なる過去の思い出の再燃ではなく、今もなお続いている愛の証であることと感じました。

また、本作は「愛とは何か」という根源的な問いを投げかけているのではないでしょうか。結婚を控えた直子が、なぜ過去の恋人と関係を持つのか。賢治はなぜそれを受け入れるのか。この問いに対する明確な答えは提示されていませんが、彼らの関係を通じて、「愛は必ずしも社会のルールや倫理に縛られるものではない」というメッセージではないでしょうか。