回想シーンでご飯3杯いける

12か月の未来図の回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

12か月の未来図(2017年製作の映画)
3.8
パリの名門高校で教師を務める主人公が、ちょっとした言葉のあやがきっかけで郊外の教育困難中学に送り込まれるという、教師版「ホットファズ」みたいなストーリー。

フランスにはこれと似た教師と問題児の交流を描いた映画がかなりあって、名作揃いのジャンルでもあるのだが、その背景には本作でも描かれている移民政策による経済格差や文化ギャップ、加えてそもそも教育を重視するお国柄があるのだと思う。本作では、着任初日に、他民族で構成されるクラス故に出席簿を読む事さえままならない状況に主人公が苦労するエピソードから始まる。

同様の題材でもアメリカの「フリーダムライターズ」等のように課外活動や特別課題にスポットを当てるパターンが多い中で、本作はあくまで主人公の専門である国語(フランス語)の授業を通じて問題児の心を開いていくのが特徴。言葉を知る事、好奇心を育む事が人生を豊かにしていくという主人公の教育哲学に心を打たれるし、小説「レ・ミゼラブル」に対するユニークな解釈等もあって、僕達観客も生徒になった気分で楽しめる。

元々は進学校の堅物教師だった主人公が、生徒に教えるだけではなく、生徒から教わることもあるという描写もあって、またフランスに新しい教師ものの名作が生まれた事を確信する。日本でも「文部科学省 特別選定作品」に選ばれているとの事。