ペコ

クーリエ:最高機密の運び屋のペコのレビュー・感想・評価

3.9
「キューバ危機」を回避しようと諜報活動に携わった男の命懸けの運命を描いた実話を基にした物語。キューバ危機について詳しく知らず、歴史モノに疎い僕でも、非常に見応えがあって見入ってしまいました。舞台はキューバ危機前のイギリスとモスクワ。民間人でありながらソ連側と接触を重ねたグレヴィル。5,000以上ものソ連の軍事機密を西側に流したペンコフスキー。ハラハラドキドキする展開は少ないけれど、2人のスパイに起きる出来事にジワジワと恐怖が襲ってくるような緊張感高まるストーリー。普通のセールスマンだったグレヴィルが国同士の核戦争の危機に巻き込まれていく展開は、本当にこれが実話なのかと疑ってしまうくらいの怖さを感じました。米ソの対立。人間たちの争い。裏切り。「平和な世界を作りたい」「愛する家族を守りたい」誰もが願うことが、これほどまでに難しいことなのだと感じました。そんな中でも“信じること”“信念を貫くこと”を決して忘れなかったグレヴィルたちはカッコ良かった。グレヴィルとペンコフスキーとの間に芽生えていった厚い絆に感動させられました。グレヴィルの解放までに1年半もかかったことに驚きました。国や権力でさえも、友情や家族の絆だけは壊せなかった。後半に激やせするベネディクト・カンバーバッチの演技がとにかく素晴らしかった。「007」のようなド派手なスパイアクションも良いけど、こういう静かで重みのあるスパイ映画も好きです。

ウクライナへの侵攻のニュース。そして本作の鑑賞。ソ連からロシアになっても、あの国は何も変わっていないのだと実感しました。

“我々のような平凡な人間から世界は変わるのかもしれない”

いま世界で起きていることを他人事とは思ってはいけない。平和について考えさせられる作品でした。
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