ナツミオ

クーリエ:最高機密の運び屋のナツミオのレビュー・感想・評価

4.0
WOWOW録画鑑賞

“我々のような人間から世界は変わるのかも⁈"
〜アレックスがウィンの息子アンドリューに向けて

東西冷戦下、旧ソ連から機密情報を運ぶ重責を託されたのは、ごく平凡な英国のセールスマンだった……。
驚くべき実話をベネディクト・カンバーバッチ主演で映画化した緊迫のスパイ・サスペンス作品。

原題 『The Courier』

2020年英・米作品
監督・総指揮 ドミニク・クック
製作総指揮 トム・オコナー ベネディクト・カンバーバッチほか
脚本 トム・オコナー 
音楽 アベル・コジェニオウスキ
撮影 ショーン・ボビット
出演 ベネディクト・カンバーバッチ メラーブ・ニニッゼ レイチェル・ブロズナハン ジェシー・バックリー アンガス・ライト 
翻訳者 チオキ真理

(WOWOW番組内容より)
東西冷戦下の1960年代。
米ソの対立と緊張が深まる中、大切なスパイをKGBに殺されたCIAとMI6は、それまでスパイの経験など皆無だったものの、仕事で東欧を頻繁に訪れていた英国人のセールスマン、グレヴィル・ウィン(カンバーバッチ)に目を付け、その後任に抜擢。かくしてグレヴィルはモスクワへ飛び、通称”アレックス"こと、内通者たるソ連のGRU高官オレグ・ペンコフスキー(ニニッゼ)と交流を重ねながら、彼から託された機密情報をせっせと西側へ運び続けることとなる……。

東西冷戦の時代に、世界が戦慄した”キューバ危機"
米ソ対立が全面核戦争になりかねない危機は、米側から描いた『13デイズ』(2000)を歴史の表側とすると、歴史の裏側に埋もれた史実に驚く‼️
スパイ・サスペンス作品だが、それよりも主演2人に生まれる友情と深い絆を描いた人間ドラマとして観た。

主演のカンバーバッチがセールスマン、グレヴィル・ウィン役の少し変人ぽい神経質な役柄は、適役‼️

そして、ソ連高官オレグ・ペンコフスキー役メラーブ・ニニッゼの抑えた演技が名演‼️
『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015)のソ連スパイ、アベル役マーク・ライランスを想起させる!

脇役もなかなか良い。
CIA職員、エミリー・ドノヴァン役レイチェル・ブロズナハン
お初の女優さんだが、重要な役柄。

グレヴィルの妻シーラにジェシー・バックリー。『ワイルド・ローズ』のローズ=リン!

エミリーとバディを組むMI6職員ディッキー・フランクス役にアンガス・ライト。
派手さは無いが渋い演技で印象に残る。
お気に入りに仲間入り。

MI6ディッキーの上司⁇
バートランド役アントン・レッサー。
観たことあるなぁと思ったら、お気に入りTVシリーズ、『刑事モース』のブライト警視正‼️味のある俳優さん。

音楽のアベル・コジェニオウスキはポーランド出身の作曲家。ソ連に赴いたウィンのバックに静かに流れ、哀愁を帯びたロシア民謡のような旋律が耳に残る。


印象のシーンと言葉(ネタバレあり)

・商務庁(実はMI6のディッキー・フランクス)の”ジェームズ"(ライト)、米国人コンサル(実はCIAのエミリー・ドノヴァン)の“ヘレン"(ブロズナハン)と初めて会うグレヴィル・ウィンが昼食を共にする。
”我々はソ連の動きに関心がある"
“国に貢献しないか?"

”世界にも"
二人に見つめられるウィン。
沈黙が続くなか、状況を飲み込めないウィンが次第に理解する沈黙の表情の変化が彼の戸惑いをよく表している。


・最初の任務でモスクワから帰国後、クーリエ役を固辞するウィンにエミリーが手を添え
「“4分前警報"は無意味よ!」
核爆弾が落ちる4分前の警報のことを、例えにエミリーがウィンを説得する。

“これは核戦争に絡む仕事だったのか⁈"

“「この事態を防ぐチャンスがあった」と悔やむか?
そして……全てが終わる"

世界が終わる最後の4分間。
出来ることは、そう多くない。

・バレイ鑑賞シーン
最初と後半の2回あるが、2回目の”白鳥の湖"の舞台とウィン、ペンコフスキーそれぞれの表情を交互に捉えるカット。
2人の感極まる表情に胸熱‼️

・そして脱出計画の頓挫……

・刑務所でのウィンの過酷な生活、素っ裸にされ、丸坊主に刈られ、尋問、暴行、粗悪な食事で激痩せしたウィンにカンバーバッチの凄さ‼️

・ウィンへの面会がやっと叶いシーラ(バックリー)が対面するシーン。
ウィンの変わりように絶句する彼女。
キューバ危機が去った情報を伝えるも、看守に遮られる。
”帰国したら…… 一からやり直しましょう"

・ウィンとペンコフスキーの再会。お互い見る影も無い姿。陰影の濃い撮影で表情も良く分からないお互いが許しを乞い、邂逅し、許す姿は静かな感動‼️
そして家族を、世界を救うことが出来なかったと語るペンコフスキーに、
”フルシチョフはミサイルを撤去した"

“君は偉業を成し遂げた!
 君は成功した! 
  立派にやり遂げたんだ‼️"

2人の強い絆と友情に胸が締め付けられる。

冷戦下の史実を描いた作品は多数あるが、
こちらも歴史の裏側を描いた名作でした‼️



【忘備録】ネタバレあり
キャスト
・グレヴィル・ウィン Greville Wynne
演:ベネディクト・カンバーバッチ
英国の技師・ビジネスマン。当時頻繁に東欧に出張していたことからMI6に雇われる。

・オレグ・ペンコフスキー(英語名:アレックス) Oleg Penkovsky
演:メラーブ・ニニッゼ
ソ連軍参謀本部情報総局(GRU)大佐

・エミリー・ドノヴァン 
Emily Donovan
演:レイチェル・ブロズナハン
CIA職員

・シーラ・ウィン Sheila
演:ジェシー・バックリー
グレヴィルの妻

・ディッキー・フランクス 
Dickie Franks
演:アンガス・ライト
MI6職員

・ジョン・マコーン
演:ジェリコ・イヴァネク
CIA長官

・オレグ・グリバノフ
演:キリル・ピロゴフ
KGB職員

・バートランド
演:アントン・レッサー

・ヴェラ
演:マリア・ミロノバ
オレグの妻

・ニキータ・フルシチョフ
演: Vladimir Chuprikov
ソ連共産党中央委員会第一書記

・アンドリュー・ウィン
演:キーア・ヒルズ
グレヴィルの息子

・レナード
演:ジョナサン・ハーデン

・イリサ
演:オルガ・コフ


オレグ・ペンコフスキー
(Wikipediaより)
GRU大佐で後に亡命したヴィクトル・スヴォーロフは、「歴史家はGRU大佐オレグ・ペンコフスキーの名前を感謝の念とともに心に留めることになるだろう。彼の計り知れない価値のある情報によってキューバ危機は最後の世界大戦に発展しなかったのだ」と述べている。

ヴィクトル・スヴォーロフ(ロシア語: Ви́ктор Суво́ров、1947年 - )は、イギリスの作家、歴史家。ロシア人。元ソ連軍参謀本部情報総局(GRU)の諜報員。
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