落ち着いたカメラワークが的確にノスタルジーを拾い上げていく様が見事な映画でした。
しかしラストの「祖母と行こうとした道は、今もはっきりと覚えている」的なセリフがいまいちピンと来なかったので、ちょっと残念でした。おそらくこのセリフから考えるに、本作は侯孝賢自身の遠い思い出と、当時の大人たちの郷愁を重ね合わせたところに鍵があり、その象徴が本土帰還を切望しながらも孤独に死んだ祖母だったのでしょうが、この祖母の描写が明らかに弱かったです。その原因は、父の遺書や母の心情など、かなり口で語ってしまっていたからでしょう。だからこそ、アハの童心とそれを取り巻く大人たちの心を目で見て追体験することが難しかったのですね。
まあひとつだけ確実に言えるとすれば、これを観るよりも「冬冬」!