Jellyfish

王国(あるいはその家について)のJellyfishのレビュー・感想・評価

4.0
(2024.1.22 64分版 観賞)
過去2度しか上映されていないという短編版を、やはりポレポレで観賞。
64分あるのに意外なほど薄味で、やっぱりこの企みは150分版の方でこそ堪能できるのだと思った。とは言え、150分版をもう一度見たいか、と問われると躊躇する類の映画ではある。

(150分版 観賞)
リハーサルを通して変化していく役者の身体を捉えることが目的の、本番テイクが存在しない変な映画。思えば、作る側にも、役者にも、観る側にもなかなかの難行。実に稀有な映画体験だが、もう一度観たいかと問われれば微妙。

冒頭、ある形式で事の顛末が語られ、その後その物語のリハーサルが始まる。
リハーサルを繰り返すことで役者が変化し、役者が変化することで観客の注意力が喚起される。制作側の企みはそれに留まらず、この企画の意図自体を示唆するようなメタなセリフとそれをドライブする脚本、加えて観客の興味を逸らさない巧みな編集が相まって、何度も何度も繰り返されるリハーサルに対して観客の興味を辛うじて繋ぎ留め続ける。
いやもちろん、飽きる人もいると思うし、実際、満席の客席の二、三箇所からイビキが聞こえてはいた。

終映後に、本作監督の 草野なつか と 濱口竜介 監督の対談あり (故にこの日のチケットは瞬殺とか)。

意外だったのは、撮影に五日しかかかっていないこと (取り調べシーンで初日一日、翌日から三日でリハーサル、最後に手紙のシーンで一日)。そして、リハーサルのシーンはほぼ時系列を変えてはいないということ。てっきり、編集で時系列 (良いテイクと悪いテイクの順番とか) を変えているものと思い込んでいたので、コレには驚き (濱口監督はこの辺りを正しく推測されていてさすが)。
濱口監督は、有名なのはもちろん、彼がする質問が実に論理的で対談が非常に興味深いものになるのが良い。
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