このレビューはネタバレを含みます
スクリーンのなかでリハーサルとテイクを重ねながら役者が声を、世界を獲得していく過程。とてもスリリングかつ挑戦的で興味深かった。
反復する台詞、言葉と言葉の往復。表情、抑揚、視線、間。わずかな違いが生み出す微かなずれが世界を、王国をひっくり返してしまう怖さ。あの子も気持ちもわたしの気持ちも、一歩歩けば、何かの弾みで膨れ上がったり萎んだり、一分一秒ごとに変わってくるかもしれない。この気持ちは、言葉は果たしてわたしの中の真実だろうか。秘密の暗号。これは虚構でありながら紛れもなく現実で、私たちはその延長線にいる。だけど何でもかんでも全てを言葉にするって、そんなに大事なのかな。言葉を交わすことだけでしか誰かを繋ぎ止められないのなら、私は他人とも私のことさえもずっと分かり合えないままの気がするし、実際そうなのかもしれない。彼女が手紙のなかで綴っていたすごく説明しづらいもの。時間のようなもの。それこそが真実そのものなのだと思う。