ひしくい

セメントの記憶のひしくいのレビュー・感想・評価

セメントの記憶(2017年製作の映画)
4.0
素晴らしい。
高層ビル建設に従事するシリア人移民・難民たちの目に映る地中海、時とともに色を変える空、ベイルートの街並み、しかしそれらは壁に掛けられた絵画に過ぎない。
彼らはビルの上で働き、下で寝て、その外に出ることはできないから。

シリアでは破壊され粉塵となったセメントにまみれ、レバノンでは水が混ぜられた建築資材のセメントにまみれる。
セメントが破壊された街には「戦争が国を破壊し尽くすのを待って」いた労働者が、新たなセメントを流し込みにやってくる。

でもこの作品は建築物や美しい画だけにフォーカスして人間を軽視しているわけではない 露骨に悲しむ様子を映さずとも圧倒的な悲しみは伝わってくる。
パンフレットの監督の話もぜひ 「観客を泣かせるのは僕の仕事じゃない」「映画は情報ではない(…)大切なのは物語に何を加えるのか」
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