zzyy

セメントの記憶のzzyyのレビュー・感想・評価

セメントの記憶(2017年製作の映画)
-
同じシリアに触れているドキュメンタリー、
「アレッポ 最期の男たち」と比較したくて鑑賞。
だいぶ趣が違っていた。
ドキュメンタリーというより、アート作品のような感じ。
誰かにインタビューする事もなく、衝撃的な映像はメインではない。
「破壊と創造の、建築の黙示録」とコピーにあるが、確かにシリア内で戦車が建物を壊す場面と入り替りに、ベイルートの建築現場でまさに建物が創られている場面が交互に映し出される。
それはまるでイタチごっこの様で、終わりのない戦争、変わることのないシリア人・移民難民労働者たちの劣悪な労働環境を物語っているようにも思えた。

指紋が消える…建築現場でそんな事が起きることを初めて知った。

エンドクレジットに、スペシャルサンクスで
ホワイト・ヘルメットの名が出てきたが、
ここで、ドキュメンタリーとは何だろうか、と考えた。
ドキュメンタリーだろうが、ドキュメンタリーではなかろうが、作品には監督や製作陣のメッセージが入るものではないか、と。
(確かにホワイト・ヘルメットの資金源は明らかにしてほしいけど。)
何だろう。「ドキュメンタリー」という立ち位置が難しい…ドキュメンタリーでなくても、「作りもの」ならば、同じことではないのか。
であれば、シリアにおいて、ホワイト・ヘルメットの彼らが行った活動は賞賛に値するべきものではないのか。それでも資金源を明らかにしないと手放しで褒めることは出来ないのか…。
マスクもせず、素手で剥き出しの瓦礫をどける、
作業服でもない。建築現場の彼らも同じ。

私はこの様な作品で、過去や現状、世界を知り、
彼らの苦悩に寄り添い、次の一歩を踏み出したい。世界に、隣人に無関心でいるべきではないのだ。

そして、本作は是非、劇場で鑑賞することを
お勧めする。建築現場の音、雫の音、音が非常に大きな役割を担っている。
本作、サウンドデザインのプロデューサーが
こう言っている、
「音響を通じて移民労働者の悲しみを伝える」
zzyy

zzyy