カラン

アスのカランのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.5
スプラッターっぽい調子のホラー映画っぽい感じかな。〜っぽい感じはたくさん出てるんだけどなー。

皮の手袋に大振りのハサミとかね、色々と好きな人が目を向けたくなる要素があるんだろうけども、『ビッグ』(1988)な遊園地で、『IT/イット』(1990)な幼年期の深層の悪夢を導入してみたかったんだけど、気が変わって『バイオハザード』(2002)のゾンビアクションになっちゃった、みたいな感じかな。

ダブルの存在が自分と同じ地平だから、ダブルが非常に現実的だよね。だから五分五分で戦えるんでしょ?地に足をつけて戦えるから、ダブルを巡るホラーじゃなくて、ゾンビアクションになっちゃう。でもスプラッターゾンビアクションよりも、「深い」作品にしたいんだよね、きっと。ラストの車中で息子の顔を見ながら、ダブル幻想が自分のいる現実を侵蝕しかけるけど、映画はお終いになっちゃう。劇中で1番恐ろしい局面なんだけど。〜っぽいで終わっちゃう。

スタッフのレベルは高いけど、本人は下積みの試行錯誤中って感じだよね。観客へのサービス精神が旺盛過ぎるのかもね。大事なものを大事にしないとね。たしかに人は自分の力量を超える何かに憧れるものだけどさ、ダブルって超大事なモチーフだから、もうちょっとちゃんと煮詰めてから映画にしないとね〜。




レンタルDVDは5.1chサラウンド。

①ドン、ドン、ドン
自分たちの別荘で奴らがあらわれて引き返してきた父が、後ろ手にドアを閉めた際、奴らがドアを叩く。リアにフロントレベルのスピーカーとパワーアンプを置いている人にしか分からんだろうが、かなり強く叩いている。ここまで音をリアに割り付けるのは、映画業界のサウンドエンジニアからのリアのシステムに投資してくれーという要請である。ちょっと感動した。


②べちゃ、ぐちゃ、ペちゃ、ぷちゃ、、、

友達の別荘の2階で双子の2人目をスラッシャーした際であるが、カメラはゾンビに馬乗りになった姉を捉える。馬乗りだから膝が映るがクロースアップに近い。カメラの背後がゾンビの頭の位置。姉がゾンビのことを刺殺したショットで、血が迸り、どろどろと溢れてくるのはカメラの背後だからスクリーンに映ってはないが、その音は大量で、長い。しつこいくらいにリアスピーカーから血のたてる音が続くのである。このサウンドエンジニアは良い!他の場面でもこの血が溢れている音は持続させていた。流血の絵はないがリアから流血の音だけしてるのはこのシークエンスだけかな。


③アンダーグラウンドでのベース

地下に入る時のエスカレーター、もうちょっと長かったらよかったね。雰囲気のある色使いでかっこいいショットなんだけど、ヤエチカ?くらいの長さで撮られても、深層の次元感が薄いかな。で、この地下でコントラバスが鳴り始めるが、ギザついたガリッとした音も入れて重厚な生のベースの音が出る。ここで他のチャンネルを使わないでモノラルのように配置するから、他チャンネルと混ざって濁った音にならない。多くの場合、こういう定位させない音って、スクリンーンから分離して映画世界から隔たっちゃうから、さめるんだけどね、そうならない。凄いんじゃないの、このエンジニアはさ!
カラン

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