TaiRa

ワイルドツアーのTaiRaのレビュー・感想・評価

ワイルドツアー(2018年製作の映画)
5.0
ウメちゃんッ!もうッ!ウメちゃんったら!って感じで死んだ。ときめき度数ばり高い傑作。

中学三年生の男の子よりも小っちゃい女子大生という存在の強さ。中三のタケとシュン、ワークショップの案内役は大学生のウメちゃん。森や海で植物のDNA採取。「一緒に行かん? DNAの採取」と可愛い年上の女の子に言われたら男の子はどうなるか。女の子が「もうっ!」って言いながら肩とかパンって叩いて来たら男の子はどうなるか。そう、好きになっちゃう。ウメちゃんの魔性な可愛いさに秒殺。3人が初めて揃う瞬間、ガラス越しに撮って会話も聞かせないのが良い。出会ったということだけ伝われば良いわけ。どうせ大したこと喋らないんだし。映画の始まりから終わりまで、何度も登場するスマホで撮影した映像。誰かが記録した主観、誰かの観た景色。恋が引き起こす「あなたの見ているものを見たい」欲求の具体化。ウメちゃんがザキヤマくんの撮った動画をひとりで見ている時、シュンがウメちゃんの撮った動画を見ている時、それは恋していることの証明。モニターに映った女に見惚れる男を、モニターの側から撮った『デジャヴ』ショットにトニスコ信者の意地を見る。同じひとを好きになった友人らは、それを知った瞬間に全く異なる形で映され2ショットは成立しなくなる。恋文を書いたタケは、ちょっと成長してバンドマンになるけど、それは想いを他者に伝えた経験のある子だから必然的。告白出来なかったら後悔すると言われたシュンは、でも最後に自分の見た景色をウメちゃんに届けようとしている。つまり「僕の見ているものをあなたにも見て欲しい」って、それは「好きです」の代わりだよ。タケの歩くスピード、方向、シュンの立ち止まる姿、見ている先、全てが食い違ったラストに彼らが近い将来疎遠になるのが分かっちゃう。でもお互い忘れないでしょ。ウメちゃん思い出す時に一緒に思い出すから。

前作『きみの鳥はうたえる』と共通するのは、この幸せな時間が永遠に続いて欲しいと祈る男の話という点。そしてその時間は、どちらも唐突に終わり永遠に帰ってこない思い出の日々となる。
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